コミュ障なんです!


「あ、起きました?」

「待って、和賀さん。帰らないで」


愛想よく答えようとした私に対して、寝起きでぼさぼさの頭の永屋さんは必死な顔。
私の肩を強くつかむもんだから、よろけそうになってしまった。


「いや、朝ご飯の材料買いに行くだけですよ」

「へ?」


固まった永屋さんの顔が、みるみる赤くなっていき、肩を掴んでいた手を離して口元を押さえた。

うわ、なにこれ。
年上の男の人に思うことじゃないのかもしれないけど、この人時々無性に可愛い。


「あ、朝飯?」

「いりませんか? 昨日味噌汁って言われたから……作ってから帰ろうかと」

「いや、いる! 俺も行くから待って。一緒に行こう?」


一緒に買い物?
何その恋人同士みたいなやつ。

いやいやいや、無理。
そんな恐れ多いことできない。


「ひとりで行けますよ」

「一緒に行きたい」

「や、私は……」


行きたくないよ。までは言えなかった。
私のカバンを奪い取り、「モノ質」と笑って見せたかと思うと、部屋に戻って行っちゃったから。

この人、仕事を離れると子供みたいだなぁ。


「はい、お待たせ」

一応外に出るからか、ジーンズとトレーナーに着替えて出てきた。服を気にするなら髪も気にすりゃいいのに。
寝癖はひっどいことになっていますよ。

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