コミュ障なんです！

「思いませんよ。永屋さんは仕事しっかりする人じゃないですか。同僚に同意もなしに手を出すなんてそんな迂闊なことするとは思えませんもん」


思った通りを言ったら、真顔が固まった。そしてふっと変わったはずの空気が、また緩やかなものへと戻った……ような気がした。

私が瞬きをしているうちに、永屋さんは今度はしゃがみ込んで笑い出した。
どうしちゃったの、情緒不安定だな。


「あの、永屋さん？」

「ははは。そうくる？　参った。やっぱスゲーわ、和賀さん」

「何がですか！」


さっぱり意味が分からないけど、笑われる流れでもないと思うんだけど。


「あー」


笑いが収まるのを待っている私を、彼が下から見上げてくる。
愛想笑いと言うのとも違う、もっと落ち着いた穏やかな顔で、口元を緩ませて。


「……俺、和賀さんが好きだよ」


はい？
なんか今、ありえない言葉が聞こえたような気がするんですけど。
心臓だけを残して石化したみたいに、体がうまく動かない。


「な、何の冗談で」

「面白いしさ。なんか安心するんだよね」


あ、そっちか。
気を使わなくていいから好きだよー的な友達っぽいやつね。


「ああ、そういう意味で」

「違うよ」


よいしょ、とおっさんくさく言って立ち上がった永屋さんは、今度は私を見下ろした。


「恋人になってほしいって意味で、好きなんだよ」