コミュ障なんです!
開いた口がふさがらなかった。
和賀香澄、二十七歳。
人生で初めて、告白と言うものをされました。しかも、こんなイケメンから。
「和賀さんはその気ないんだろうけど、まずは友達から……」
続いている永屋さんの声などまったく頭に入ってこない。
ただ、どうしようどうしようって、思って。自然に足は後ずさって。
思考は停止を選択しました。
「……帰ります」
「和賀さん? ちょっと待っ……」
その時、停止した思考の分のエネルギーも足にいってしまったのではないかと思うほど、私の足は速かった。
気がついたら電車に乗って、自分のアパートに帰ってきていた。
「夢だ夢。もう一度寝なきゃ」
ベッドにもぐりこんで、自分の体を抱きしめてながら、私はぎゅっと目をつぶる。
布団の温かさにホッとして、すぐに眠りは訪れた。
そして目覚めた段階で、ようやく物事が考えられるくらいに私の頭は回り始めた。
「やばい、逃げてきちゃった」
現状を把握しようと辺りを見回し、カバンに入っていたスマホの着信履歴を見て、顔が熱くなった。
「こんなに、全部永屋さんじゃん」
好きって……本当に?
でも無理だよ。私、専業主婦になりたいんだもん。
三浦さんみたいな、仕事できる女にはなれないもん。
つか、三浦さんはどうなったの?
元カノってことなの?
ああ、上手くいかないから諦めて私?
それならなんとなく納得がいく。
でも無理だよ。
コミュ障にとって、永屋さんみたいな人は出来すぎていて無理なんです。
そう思い、スマホの電源を消した。