コミュ障なんです!

ぼんやりと、永屋さんの部屋で見た三浦さんの写真が頭に浮かんでくる。
仮に付き合っていたとしても過去の話なんだろうし、これに関しては忘れたいなって思っているのに、事あるごとに頭に浮かんできて困るな。

私にとっても尊敬すべき上司である三浦さん。
三浦さんを好きになるような人が私を好きになるわけないって思うんだよ。
だから永屋さんの気持ちも、勘違いなんじゃないのかな、なんて……。

後ろ向きな結論に達すると落ち着く私ってなんなんだろう。
眼鏡を直して、はあ、と本日大盤振る舞いのため息をつく。
落ち着く……けど、嬉しいわけでもない。自分の気持ちが全然わからないよ。





永屋さんからのメールの返事が来たことに気付いたのは、お昼の直前だ。


【大体いいと思うけど、ちょっと確認したいこともあるから、お昼一緒に食べない? 】


画面を見て固まる私。
仕事に私情は持ち込まないんじゃなかったのか。
ここでお昼一緒とか、ちょっと狡くないかぁ?


【お昼は美波ちゃんと食べるので……】

と打ち込んでいる途中で、山海さんがシステム開発部に入ってきて、私のところにまっしぐらにやって来た。
思わず口を開けて見つめてしまった。

なんで私? 美波ちゃんじゃなくて?


「お疲れさま。和賀さん」

「お、お疲れ様です」

「永屋が、先に席取っておくから和賀さんと岩田さん連れて来いって」

「あ、……そうですか」


さすができる営業は根回しが違う。
本人じゃなく山海さんを送り込まれたら断るのは難しいもんな。
逃げるのは無理と判断し、私は諦めてお昼に行く準備を始めた。

< 99 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop