好きを百万回。 〜Revenge at Boston〜
酔って意識のはっきりしないこまりを何ヶ月ぶりかで胸に抱く。
こまり こまり こまりーーーー
ひと回り小さくなってしまった身体を元気になれと祈りを込めて包み込む。
『他の人なんて好きにならへん』
こまりが夢現で呟いた言葉に、不覚にも視界が滲んだ。
こまりを追い詰めて、苦しめたヤツをオレは絶対に許さない。
ボストンの冬は厳しい。
マイナス20度なんて日もあるし、物凄い雪になることもある。
その日も灰色の雲が空を覆い、吐く息はどこまでも白く、オレはダウンコートの前をきっちりとしめて口元までマフラーを巻いてニット帽を目深に被り大学へと急いでいた。
トートバッグの中でスマホが鳴る。
手袋をした手で取り出して見るけれど見覚えのない番号表示。
「ハロー?」
怪訝に思いながらも電話に出た。
聞こえてきた声に驚き、歩みを止める。
友達と旅行に来た、もし時間があれば今晩夕食でもと電話の向こうの声が告げる。