そのままで。
信じて、願って。

些細な幸福。

手首から微かに赤い液体が体内から出ている。

じんじんとくる痛み。

今死ねたら、どんなに楽だろう。

辛いことも、嫌なことも、

全部全部放り出せる。

その時、ふと複数の人の顔が浮かんでくる。

岩野のお祖母ちゃん、おじいちゃん。

叔母や叔父の笑顔。

親友のりんりん、れいれい。

美琴お姉ちゃん。


そして、秀太…。


“あぁ、だめだ。今日も死ねない。
きっと明日も死ねないんだろうな…。”

こう思ったのは今日で何回目だろう。

ふと手首を見て見ると、何度も切った後がある。

しかしどの傷も浅いため、数日経てば瘡蓋となり、ただの傷後になる。

度胸がない。勇気がない。死ぬのが怖い。

そんな理由ではない。そんな理由ではないのです。

私はただ、もう一度、幸せになりたいだけ。

バラバラになった家族と、もう一度だけ会いたい。

不可能なことだと分かってるけど…

だって、親なんだよ?

“家族”なんだよ?

どこを探しても同じ人なんかいない。

私はただ、家族に再開しずに命を絶つ事は

後悔につながると思ってるから、

ここでへこたれるわけにはいかないの。

まだまだ諦めるわけにはいかない。
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