そのままで。
家に帰ると、もう空は暗くなっていた。

この日は肌寒く、鳥肌が立つような寒気が体中に

電気が走るようにきた。

お父さんがリビングに行くと、ソファに座った。

「美月、美奈、こっちにおいで。」

言われるがままにお父さんのもとへ駆け寄った。

するとお父さんの口から、思いもよらぬ言葉が出てきた。

「なぁ、なんでお母さんを選んだんや。」

ドキッ―――――

“どうしよう、何て答えよう…。どう答えたら怒られないのかな、”

その時の私の頭の中はそのことでいっぱいだった。

だからいわゆる“パニック状態”というものだろう。

「美奈、なんでや?」

お父さんが美奈ちゃんにそう聞いた。

だが、私は自分のことっで精一杯で、美奈ちゃんがなんて答えたのか全く分からなかった。

今の私なら、美奈ちゃんの答え方次第でお父さんの態度を伺って答えただろう。

この時の私は幼く、そんな考えは少しも考えれなかった。

そう焦っているときに、次は私に質問された。

「美月はなんでや?」

私はなにも答えられなかった。

“どうしよう、どうしよう、”

「美奈につられて言っただけか?」

その質問にピンと来た。

そういうことにすればいいんだ!

「………うん。」

わたしは小さく頷いた。

「そうか、分かった。じゃあ美奈はお母さんと暮らすんやな。」

「うん、」

「美月はどうするんや、お父さんと一緒にいたいか?」

「うん!」



―――――その頃、霧咲家では――――――

「秀太~?美月ちゃんと仲直りしたの?」

「………してない。」

秀太は部屋の隅っこの方で膝を抱えていじけていた。

「秀太、はやく仲直りしなさい。」

「……。」

「後悔することになるわよ?」

「どうして?」

「んー…ま、とりあえず今度遊ぶときに謝りなさいよ。」

「…うん。」

あきちゃんは階段を下りると秀太のお父さんのいるソファの隣に寄り添った。

「決まったらしいわよ、親権がどっちか。」

「結局、どうなったんだ?やっぱり二人ともお母さんと一緒にお母さんの実家に帰るのか?」

「それが……。」

「どうした?」

「美月ちゃんはお父さんがいいって…。」

「弁護士の人にはお母さんが良いって言ったんだろ?」

「そうだけど、家に帰ったら、美奈ちゃんにつられてって言ったらしいわよ。」

「そんな…。それにしても、どうしてお前が知ってるんだ?」

「美琴ちゃんからメールが来てて…。」

そういうと、携帯のメールを見せてきた。
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