縛 り
虚実
「今だから言えますけど、僕、お鈴さんの事がずっと好きだったんです。
昔から。
だからこうやってまた会えたのが嬉しくて。
少しだけ、近藤さんや土方さん達と一緒に居れないのが残念だけど、其れはもう仕方が無いから。
本当に、二度と貴女に会うつもりは無かったんですよ。
それが僕なりの覚悟だった。
でもこんな身体になってしまってまで貫く覚悟でも無いですよね。
本当、もう一度貴女に会えて結構満足してるんです。
好きな人に会うなんて他の皆にはきっと出来ないことだろうから、僕は幸せ者です」
彼は終始笑顔で話した。
だけど私には自嘲しているようにも聞こえて、すぐに返事が出来なかった。
それくらいに彼の気持ちが汲み取れなかった。
こんなに真っ直ぐに言葉にしているのに、それにしては何処か違和感を感じる。
ただ唯一、私が汲み取れた彼の気持ちは本当は幸せではないこと。
つまり、私の感じた違和感とは彼が嘘を吐いたが故に生じたものだろう。
昔、何処かで嘘をつく人間は何かしら表に出ると聞いた。
表情なり、仕草なり。
もうこれでは何が嘘で何が本当か分からない。
(吁、でも、分からなくてもいいか)