彼の青色
私も彼もドーナツが好きだ。
ただしくは、ドーナツショップがすきだ。
ショーケースに整列したドーナツを見ると、私はとても、幸せな気持ちになるし、彼もそうだと言っていた。
二人掛けのテーブルの奥の席に座ると、ショーケースのドーナツとその奥でせわしなく働く店員さんを眺めることができて、すごく迷惑な客だとは思うけど、一日中ここにいたいと思う。
平日の午後のドーナツショップで、チョコレートのドーナツをひとつとおかわり自由のコーヒーを目の前に、私はぼんやり彼のことを思い出す。
一日の中のこういう隙間時間に、私はいつも彼のことを考えている気がする。
会えないからだろうか。
彼は今ごろなにをしているのだろうとか、そういえば前に彼がこう言っていたっけとか、あの人の着ている服が彼のものと似ているとか。
コーヒーからはゆらりゆらりと白い湯気がたっている。
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