彼の青色
それは深夜によくくる感情。
乳房の真ん中あたりに、大きな石をたくさん詰め込まれる感じ。
そうなると浅い息しか出来なくなってしまうから、意識して深呼吸をしながら私はそれをやり過ごす。
乳房の真ん中にいったい何があるというんだろう。
心臓は少し左側にあるらしいから、心臓ではないはずなのに、得体の知らない何がが痛いと感じる。
電話を切ったあと、その痛い部分を抑えたまま、ベッドに潜り込んで頭から布団をかぶった。

「寂しい」

呟いた声は、布団に吸い込まれていく。

「会いたい」

会いたい時に会えないから、遠距離は苦手だ。
寂しい時に寂しいと言えないから、遠距離は苦手だ。
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