透き通る季節の中で
 昨日の勝負の結果は、私の予想どおり、美咲が一位で松田さんが二位で友紀が三位だったらしい。
 美咲は友紀にティラミスをおごってもらったという。

 友紀はものすごく悔しそうな顔をしていて、ぶつぶつ独り言を言いながら歩いている。
 美咲は爽快な表情。いつも以上に足取りも軽やか。

「昨日、あれから山下くんと一緒に帰ったの?」
 美咲が私に尋ねてきた。

「う、うん。い、一緒に帰ったよ」
 私はどもりながら答えてしまった。落ち着け自分。

「やっぱり、そうだったんだ。それで、どんなことを話したの?」
「山下くんの話を聞いて、私が走り始めたきっかけと、中学生時代のことと、美咲と友紀のことを話したよ」
「他には?」
「他には何も話してないよ」
「ふーん。咲樹が男子と話すなんて珍しいわね」
 美咲が言ったとおり、確かに珍しい。

「山下くんてさ、見た目は弱々しい感じがするけど、すごく優しそうな人に見えるよね」
「う、うん」
 昨日、山下くんと話したとき、美咲と同じことを思った。
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