透き通る季節の中で
「今日の帰りも勝負しよう!」
 ずっと黙っていた友紀が、突然、大きな声で叫んだ。

 周りにいる生徒たちが、私たちのことを見ている。

「いきなり叫ばないでよ。恥ずかしいじゃん」
 美咲が友紀に向かって言った。

「別にいいじゃん。今日の帰りも勝負しようよ」
 普通のトーンで言った友紀は、瞳をうるうるさせている。

「何回やったって、友紀はあたしには勝てないわよ」
「ほんとムカつく! じゃあ! 今から勝負よ! よーい! スタート!」
 友紀がものすごい勢いで走り始めた。
 
 一人で走っている。
 その後ろ姿はどんどん小さくなっていく。

 うおおおおおおおおおおおおお! 美咲に負けてたまるものか!

 友紀の叫び声が聞こえてくる。



「友紀って、本当に面白いよね」
 美咲が笑いながら言った。

「そうね」
 私も思わず笑ってしまった。

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 絶対に美咲に勝つぞ! 

 また友紀の叫び声が聞こえてくる。
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