透き通る季節の中で
 この日も山下くんは部活に参加した。
 
 案の定、筋肉痛になってしまったようで、足をひきずりながら歩いている。
 足の痛みを紛らわそうとしているのか、笑顔を絶やさない。
 どの先輩に対しても、大きな声で挨拶している。

「足が痛むようなら、無理しないでくださいね」
 橘先輩が山下くんに優しく声を掛けた。

「大丈夫です。走れませんが、歩けます」
 明るい声で言った山下くんの表情からは、今日も頑張るぞ! という決意が伺える。
 
 橘先輩は何も言わず、微笑みながら、山下くんの肩を叩き、部員の前に立った。
 
「それでは、外周を走ります。今日は、二十周です」
「はい!」
「今日も走って走って走りまくって! ランランラン!」
 橘先輩の掛け声により、部員のみんなが裏門から飛び出していった。

 美咲と友紀と松田さんは、今日も競い合うように走っている。
 友紀は特に力が入っているように見える。

 私は走りながら、後方に目を向けた。
 山下くんは、ゆっくりと歩いている。
 表情は明るい。
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