透き通る季節の中で
 朝のホームルームが終わった後、山下くんが私の教室に入ってきた。

 緊張した趣で、私の方に向かってくる。

 なんだかすごくドキドキする。どこを向いていいのかわからない。周りの席の人の視線が気になってしまう。

「おはようございます。詩のノートを持ってきましたので、よかったら、読んでみてください」
 山下くんが一冊のノートを私に手渡してくれた。

「あ、はい。読ませていただきます」
「どうもありがとうございます」
「足は大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。今日もよろしくお願いします」
「私こそ、よろしくお願いします」
「それでは、また放課後にお会いしましょう」
「はい」

 山下くんは、恥ずかしそうにしながら、教室から出ていった。 

 まだ胸がドキドキしている。周りの席の人の視線を感じる。

「あの人、佐藤さんの彼氏なの?」
 隣の席の佐々木さんが私に尋ねてきた。

「い、いえ、違います。さっきの人は、ただの部員仲間です」
「ふーん。そんなふうには見えなかったけどね」

 私は恥ずかしくなって、教科書で顔を隠してしまった。
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