透き通る季節の中で
 山下くんは、一日も休まず部活に参加し続けた。

 風の強い日も雨の日も、黙々と走り続けている。

 走れば走るほど、脚力も体力も向上していき、部員のみんなと一緒に走れるようになった。

 外周を十周走っても、周回遅れになることはない。
 上り坂も息を切らさずに走っている。
 挨拶の声は、他の誰よりも大きい。
 部員のみんなとも、すっかり打ち解けている。

 真面目な姿勢で練習に取り組んできた成果だと私は思う。


 
 私の走力も着実にアップしている。
 
 外周を二十周走っても、息を切らさず、上り坂を駆け上がれるようになった。
 足に負担の掛かる、下り坂もスムーズに走れる。
 松田さんとも仲良くなり、気軽にまっちゃんと呼べるようになった。
 山下くんは、山下くん。亮太くんとはまだ呼べない。



 この日の山下くんは、とても元気な様子で、「今日から僕も参加します」と友紀に向かって言った。
 友紀は、「ウェルカムよ」と言って、とても嬉しそうな顔をしている。

 山下くんが参加するので、私も参加することにした。


 
 勝負の結果は、美咲が一位。まっちゃんが二位。友紀が三位。私が四位。山下くんは最下位。

 一位の美咲に、「山下くんは初参加だから、見逃してあげて」と言ってみたけど、「勝負の世界は厳しいのよ」と言われ、山下くんにティラミスをおごらせていた。

 美咲はクールな一面があるけど、頭は切れるし、優しい心を持っている。

 四百円もするティラミスをおごらせたのは、山下くんを思っての行いだと私は思う。
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