透き通る季節の中で
 今日も部員のみんなと一緒に外周を走った。

 一周目は気づかなかったけど、二周目に気がついた。

 誰かが植えたのだろうか。
 毎年、咲いているのだろうか。
 上り坂の途中にコスモスが咲いている。

 白色のコスモス。
 ピンク色のコスモス。
 黄色のコスモス。
 赤色のコスモス。
 黒色のコスモス。

 ちょっとしたコスモス畑。
 どのコスモスも元気に咲いている。


 集団から離れ、上り坂の途中で立ち止まり、コスモスを眺めていたところ、亮太が私の元に駆け寄ってきた。

「綺麗だね」

「うん」

「咲樹は、何色のコスモスが好き?」

「赤色。亮太は?」

「僕も赤色が好き。コスモスの花言葉、知ってる?」
 私は花に疎い。花言葉は全く知らない。

「何だろう。教えてくれる?」

「うん」
 亮太が私にコスモスの花言葉を教えてくれた。

 白色のコスモスは、優美・美麗・純潔。
 ピンク色のコスモスは、乙女の清純。
 黄色のコスモスは、野性的な美しさ・自然美・幼い恋心。
 赤色のコスモスは、乙女の愛情・調和
 黒色のコスモスは、恋の終わり・恋の思い出・移り変わらぬ気持ち。

「亮太は詩を書いているから、花言葉にも詳しいんだね」

「うん」

 二人でコスモスを眺めていたところ、友紀が私たちの元に駆け寄ってきた。

「ちょっとお二人さん、目のやり場に困るわよ。花なんか見てないで走ってね」
 友紀に注意され、私と亮太は走り始めた。


 吐く息が薄っすらと白い。
 長い上り坂を一気に駆け上がると、さわやかな秋風に包まれる。
 混じり気のない新鮮な空気。
 火照った体を優しく冷やしてくれる。

 

 今年も私の好きな、透き通る季節がやって来た。
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