透き通る季節の中で
 入部二日目。

 長谷川さんと竹下さんと三人一組になって準備体操をした。

 上級生たちと一緒に体育館の中を走り回り、先生にボールの持ち方やキャッチの仕方やパスやドリブルやシュートのやり方を教わった。

 
 ドリブルの練習をしていたとき、先生に声を掛けられ、上級生と二人一組になってパスの練習をすることになった。

 パスの練習を始めてからすぐに、大きくて硬いバスケットボールが私の顔面に当たってしまった。

 私は運動神経が鈍いのか。集中力が足りないのか。そもそも、やる気の問題なのだろうか。

 
 ピアノ教室の先生に教わった言葉を思い出して、バスケットボールとお友達になろうとしてみたけど、全くお友達になれない。

 パスの練習をすれば、ボールが顔面に当たってしまい、ドリブルの練習をすれば、突き指をしてしまい、シュートの練習をすれば、自分で投げたボールが自分の頭に当たってしまう。


 バスケットボールが私から離れていく。みんなと一緒に練習すればするほど、だんだんボールに触ることが怖くなってきた。
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