透き通る季節の中で
中間テストが終わり、勉強から開放された。
明日からまた部活に専念できる。と思うと嬉しくなってくる。
美咲と友紀は、テストの出来が悪かったのか、ちょっと元気がないように見える。
口数も少なく、暗い顔をしている。
それは、毎度のこと。
日頃から、しっかり勉強している亮太とまっちゃんは、いつものように明るく元気な様子。
もちろん、私も元気。
「ああ! もう! テストなんて! この世から消えてしまえばいいのに!」
「そうそう、友紀もたまには良いことを言うわね」
「えへへ」
いつもは競い合っている友紀と美咲だけど、こういうときだけ気が合うみたい。
肩を組みながら、スキップしている。
今日も、さわやかな秋晴れ。
空は青く高く、どこまでも澄み渡っている。
晩秋の透き通った冷たい空気が体を包み込む。
絶好のランニング日和。
「テスト明けということで、いつものように練習は軽めにしておきます。今日の練習メニューは、外周を十周です。それでは、軽くストレッチをしてください」
橘先輩の掛け声で練習が始まった。
外周を十周では物足りない。今日はもっと走りたい気分。
「ねえ、亮太。十周走った後、二人で五周しない?」
「いいよ。せっかくだから、勝負しようか」
乗り気の亮太と話し合い、今度のデートのとき、負けた方が勝った方に食事をおごる。ということに決まった。
部員のみんなが裏門から校庭に入ったときが、スタートの合図。
「今日も走って走って走りまくって! ランランラン!」
橘先輩の掛け声により、部員のみんなが裏門から飛び出していった。
あとで勝負する私と亮太は、集団の最後尾についた。
テスト明けは、いつものんびり。
スローペースでゆっくり走る。
和気あいあい、みんなで楽しく走る。
今は体力温存。軽く足慣らし。
ずっと真面目に練習に取り組んできた亮太と私の差は縮まりつつある。
私は陸上暦、四年目。亮太はまだ一年目。
普段は恋人同士。
今はライバル同士。
まだまだ亮太には負けられない。
亮太のために手加減はしない。
絶対に私が勝つ!
十周目。
長い上り坂の途中で、部員のみんなが裏門から校庭に入っていった。
よーい! スタート!
私は走る速度を一気に上げた。
亮太は私についてきている。
私のすぐ真横を走っている。
まだまだ余裕のありそうな走りっぷり。
呼吸も安定している。
その横顔は真剣そのもの。
一周目は抜きつ抜かれつ。私が前に出れば、亮太が前に出る。
二周目も抜きつ抜かれつ。亮太が前に出れば、私が前に出る。
三周目に入った瞬間、私はギアを一段上げて、ロングスパートに入った。
亮太は私についてこられなくなった。
私と亮太の差はどんどん広がっていく。
もう辺りは薄暗い。
街灯のない道は真っ暗。
ついさっきまで晴れていた空は、厚い灰色の雲に覆われている。
いつの間にか、風も強くなっている。
四周目の坂道を駆け上がっていたとき、前方の空がピカッと光った。
その瞬間、大きな雷鳴が轟いた。
数秒も経たないうちに、土砂降りの雨が降り注いできた。
もの凄い雨風。
坂の上から大量の水が流れ落ちてくる。
亮太の姿は見えない。
もう勝負はついている。
四周でやめようか、私は考えた。
亮太だったら、どうするか考えた。
亮太は最後まで走ると思う。
五周走ると思う。
私はそう考えて、もう一周走ることにした。
雨風は激しさを増し、再び雷鳴が轟いた。
私は土砂降りの雨の中を走り続けた。
部員のみんなは、体育館のピロティの下に集まっていた。
ずぶ濡れになっているのは……私だけ。
まだ走っているのだろうか、亮太の姿は見当たらない。
また雷鳴が轟き、雨風は勢いを増している。
私はなんだか心配になってきた。
明日からまた部活に専念できる。と思うと嬉しくなってくる。
美咲と友紀は、テストの出来が悪かったのか、ちょっと元気がないように見える。
口数も少なく、暗い顔をしている。
それは、毎度のこと。
日頃から、しっかり勉強している亮太とまっちゃんは、いつものように明るく元気な様子。
もちろん、私も元気。
「ああ! もう! テストなんて! この世から消えてしまえばいいのに!」
「そうそう、友紀もたまには良いことを言うわね」
「えへへ」
いつもは競い合っている友紀と美咲だけど、こういうときだけ気が合うみたい。
肩を組みながら、スキップしている。
今日も、さわやかな秋晴れ。
空は青く高く、どこまでも澄み渡っている。
晩秋の透き通った冷たい空気が体を包み込む。
絶好のランニング日和。
「テスト明けということで、いつものように練習は軽めにしておきます。今日の練習メニューは、外周を十周です。それでは、軽くストレッチをしてください」
橘先輩の掛け声で練習が始まった。
外周を十周では物足りない。今日はもっと走りたい気分。
「ねえ、亮太。十周走った後、二人で五周しない?」
「いいよ。せっかくだから、勝負しようか」
乗り気の亮太と話し合い、今度のデートのとき、負けた方が勝った方に食事をおごる。ということに決まった。
部員のみんなが裏門から校庭に入ったときが、スタートの合図。
「今日も走って走って走りまくって! ランランラン!」
橘先輩の掛け声により、部員のみんなが裏門から飛び出していった。
あとで勝負する私と亮太は、集団の最後尾についた。
テスト明けは、いつものんびり。
スローペースでゆっくり走る。
和気あいあい、みんなで楽しく走る。
今は体力温存。軽く足慣らし。
ずっと真面目に練習に取り組んできた亮太と私の差は縮まりつつある。
私は陸上暦、四年目。亮太はまだ一年目。
普段は恋人同士。
今はライバル同士。
まだまだ亮太には負けられない。
亮太のために手加減はしない。
絶対に私が勝つ!
十周目。
長い上り坂の途中で、部員のみんなが裏門から校庭に入っていった。
よーい! スタート!
私は走る速度を一気に上げた。
亮太は私についてきている。
私のすぐ真横を走っている。
まだまだ余裕のありそうな走りっぷり。
呼吸も安定している。
その横顔は真剣そのもの。
一周目は抜きつ抜かれつ。私が前に出れば、亮太が前に出る。
二周目も抜きつ抜かれつ。亮太が前に出れば、私が前に出る。
三周目に入った瞬間、私はギアを一段上げて、ロングスパートに入った。
亮太は私についてこられなくなった。
私と亮太の差はどんどん広がっていく。
もう辺りは薄暗い。
街灯のない道は真っ暗。
ついさっきまで晴れていた空は、厚い灰色の雲に覆われている。
いつの間にか、風も強くなっている。
四周目の坂道を駆け上がっていたとき、前方の空がピカッと光った。
その瞬間、大きな雷鳴が轟いた。
数秒も経たないうちに、土砂降りの雨が降り注いできた。
もの凄い雨風。
坂の上から大量の水が流れ落ちてくる。
亮太の姿は見えない。
もう勝負はついている。
四周でやめようか、私は考えた。
亮太だったら、どうするか考えた。
亮太は最後まで走ると思う。
五周走ると思う。
私はそう考えて、もう一周走ることにした。
雨風は激しさを増し、再び雷鳴が轟いた。
私は土砂降りの雨の中を走り続けた。
部員のみんなは、体育館のピロティの下に集まっていた。
ずぶ濡れになっているのは……私だけ。
まだ走っているのだろうか、亮太の姿は見当たらない。
また雷鳴が轟き、雨風は勢いを増している。
私はなんだか心配になってきた。