透き通る季節の中で
 私は病室で目覚めた。

 まだ吐き気がして、頭がくらくらする。胸もお腹も気持ち悪い。

 眠りながら涙を流していたのだろうか、頬がかさついていて、枕が湿っている。



 ベッドに横になったまま、真っ白い天井を見つめていたところ、美咲と友紀とまっちゃんが病室に入ってきた。

 私はベッドから起き上がり、美咲の話に耳を傾けた。

 集中治療室の前で、私は意識を失って倒れてしまい、この病室に運ばれたとのこと。
 美咲と友紀とまっちゃんが、一晩中、私に付き添ってくれたという。


「お腹が減ってるでしょ?」
 美咲が私にサンドイッチを差し出してくれた。

 友紀とまっちゃんは、ペットボトルのお茶を差し出してくれている。


 せっかくの好意だけど、食欲は全くない。何も飲みたくない。


「迷惑を掛けて、本当にごめんね」
 美咲と友紀とまっちゃんに向かって頭を下げた。

「気にしないでいいのよ」
 美咲が微笑みながら言ってくれた。

 友紀とまっちゃんも微笑んでいる。


「無理しないで、ゆっくり休んでね」
 美咲が優しく言ってくれた。

「う、うん……」
 私はベッドに横になって目を閉じた。



 昨夜の記憶がだんだん蘇ってくる。
 思い出したくないけど、思い出してしまう。

 亮太は……亮太は……亮太は……

 私の大好きな亮太は…………
  

 
 亮太を誘わなければ……
 一人で走っていれば……
 勝負なんかしなければ……
 四周でやめておけば……
 上り坂で亮太を待っていれば……
 

 亮太のご両親に合わせる顔がない。
 謝って済まされることではない。
 悔やんでも悔やみきれない。

 私はどうすればいいのか……
 どう償えばいいのか……



 私は病室で半日ほど過ごし、お母さんに付き添われて自宅に帰った。



 亮太が亡くなった原因は、急性心不全。

 お母さんが私に教えてくれた。





 悲しみも、突然やってくる。
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