透き通る季節の中で
 私は部屋にこもった。
 亮太の詩を読み返した。
 何度も何度も読み返した。
 読む度に涙が溢れ出してくる。
 大切な亮太のノートが涙で湿ってしまう。
 
 それでも私は亮太の詩を読み続けた。

 どの詩も生き生きとした言葉で表現されている。
 亮太らしい言葉で綴られている。


 
 亮太が亡くなったなんて、信じられないし、信じたくない。
 とてもじゃないけど、受け入れられない。
 
 また詩を書いたよ。明日、詩のノートを持ってくるね。

 亮太の声が聞こえてきそうな気がする。
 メールが来そうな気もする。
 また一緒に走れそうな気もする。



 詩のお礼に、亮太の絵を描く。
 亮太の似顔絵を描く。
 亮太が走っているところの絵も描く。
 思い出の海の絵も描く。
 亮太が喜んでくれるように描く。
 精一杯の愛情を込めて描く。
 今日から毎日描く。
 最低でも百枚描く。
 
 まずは似顔絵から。
 にっこりと微笑んでいる亮太の写真を見ながら描く。


 
「辛いのはわかるけど、そんなことをしたって、死んだ人は生き返らないんだよ。そろそろ現実を見れば?」

 千春の心ない言葉に私は怒りを覚えた。

「うるさーい! うるさい! うるさい! うるさい! うるさい! うるさーい! 彼氏が元気な千春に! 私の気持ちの何がわかるのよ!」

「ご、ごめんなさい」

「もう私に構わないでね」



 今から千春は完全無視。
 亮太の絵を描き続ける。
 何を言われても描き続ける。
 


 亮太にプレゼントする。

 きっと喜んでくれる。
 
 亮太の喜ぶ姿が目に浮かぶ。
< 124 / 268 >

この作品をシェア

pagetop