透き通る季節の中で
一時間目の授業が終わった後、美咲と友紀とまっちゃんが、私の元に来てくれた。
守るように、私を取り囲んでくれている。
明るく振る舞ってくれている。
「今日から部活に出るの?」
美咲が私に尋ねてきた。
「うん。今日から出ようと思ってるんだ」
私は作り笑顔で答えた。
「うほほーい!」
友紀が笑顔で叫んだ。
「いよいよ復帰ね」
まっちゃんも喜んでくれている。
「何かあったら、あたしたちに言ってね」
美咲が優しく言ってくれた。
「次の休み時間も来るからね」
友紀も優しく言ってくれた。
「あとでメールするからね」
まっちゃんの声も優しい。
授業開始のチャイムが鳴り、美咲と友紀とまっちゃんは、慌てた様子で教室から出ていった。
私はまた独りぼっち。
次の休み時間まで、どうしようもない孤独感と闘わなければならない。
また手に汗を掻いている。
一度止まった冷や汗がまた出てくる。
汗を拭きたいけど、体を動かせない。
顔を上げられない。
こうなることは、わかっていたのに……
私は下を向いたまま考えた。
こんな惨めな思いをしているのは、すべて自分のせい。
教室が静かなのは、私のせい。
私が暗いオーラを出しているから、教室が重い空気に包まれている。
誰も悪くない。
悪いのは、すべて私。
このままではいけない。
このままでは何も変わらない。
美咲と友紀とまっちゃんに守ってもらってばかりいてはいけない。
自分で何とかしなければならない。
私が変わらなければ……
机の下で携帯を操作して、美咲と友紀とまっちゃんにメールを送った。
三人とも、すぐに返信してくれた。
笑顔で……笑顔で……なるべく笑顔で……
明るい声で……明るい声で……なるべく明るい声で……
そう何度も自分に言い聞かせているうちに、一時間目の授業が終わった。
勇気を出せ。勇気を出すんだ。自分の力で乗り越えるんだ。
「あ、あの、すみません」
隣の席の佐々木さんに話し掛けてみた。
「な、何ですか?」
佐々木さんの声は、うわずっている。驚いたような顔をしている。それは、無理もないと思う。
ひそひとそ、声が聞こえる。
クラスのみんなの視線を感じる。
それでも頑張るんだ。会話を続けるんだ。
「次の授業は、何でしたっけ?」
「国語ですよ」
「あ、そうでしたね。しばらく休んでいたので、忘れてしまいました」
私は精一杯の笑顔を作った。
「体の調子は、どうですか?」
佐々木さんが私に尋ねてくれた。
「大丈夫です。気遣っていただいて、ありがとうございます」
「いえいえ、どう致しまして。そういえば、さっきからずっと敬語で話していますね」
「そうですね」
佐々木さんが微笑んでいる。
「授業のことで、わからないことがあったら、何でも聞いてね」
「はい。どうもありがとうです」
私は佐々木さんと会話を続けた。
ひそひそ声は……聞こえなくなった。
クラスのみんなの視線も感じなくなった。
教室は、ガヤガヤとうるさくなった。
「佐藤さん、おはよう」
「久しぶりだね」
佐々木さんの友達の、小林さんと三村さんが、私に優しく声を掛けてくれた。
教室は、ガヤガヤとうるさいまま。
加藤くんと山中くんが、黒板の前で漫才をしている。
その漫才を見て、笑っている女子がいる。
このとき、私は思った。
自分の道は、自分の力で切り開くものだと。
守るように、私を取り囲んでくれている。
明るく振る舞ってくれている。
「今日から部活に出るの?」
美咲が私に尋ねてきた。
「うん。今日から出ようと思ってるんだ」
私は作り笑顔で答えた。
「うほほーい!」
友紀が笑顔で叫んだ。
「いよいよ復帰ね」
まっちゃんも喜んでくれている。
「何かあったら、あたしたちに言ってね」
美咲が優しく言ってくれた。
「次の休み時間も来るからね」
友紀も優しく言ってくれた。
「あとでメールするからね」
まっちゃんの声も優しい。
授業開始のチャイムが鳴り、美咲と友紀とまっちゃんは、慌てた様子で教室から出ていった。
私はまた独りぼっち。
次の休み時間まで、どうしようもない孤独感と闘わなければならない。
また手に汗を掻いている。
一度止まった冷や汗がまた出てくる。
汗を拭きたいけど、体を動かせない。
顔を上げられない。
こうなることは、わかっていたのに……
私は下を向いたまま考えた。
こんな惨めな思いをしているのは、すべて自分のせい。
教室が静かなのは、私のせい。
私が暗いオーラを出しているから、教室が重い空気に包まれている。
誰も悪くない。
悪いのは、すべて私。
このままではいけない。
このままでは何も変わらない。
美咲と友紀とまっちゃんに守ってもらってばかりいてはいけない。
自分で何とかしなければならない。
私が変わらなければ……
机の下で携帯を操作して、美咲と友紀とまっちゃんにメールを送った。
三人とも、すぐに返信してくれた。
笑顔で……笑顔で……なるべく笑顔で……
明るい声で……明るい声で……なるべく明るい声で……
そう何度も自分に言い聞かせているうちに、一時間目の授業が終わった。
勇気を出せ。勇気を出すんだ。自分の力で乗り越えるんだ。
「あ、あの、すみません」
隣の席の佐々木さんに話し掛けてみた。
「な、何ですか?」
佐々木さんの声は、うわずっている。驚いたような顔をしている。それは、無理もないと思う。
ひそひとそ、声が聞こえる。
クラスのみんなの視線を感じる。
それでも頑張るんだ。会話を続けるんだ。
「次の授業は、何でしたっけ?」
「国語ですよ」
「あ、そうでしたね。しばらく休んでいたので、忘れてしまいました」
私は精一杯の笑顔を作った。
「体の調子は、どうですか?」
佐々木さんが私に尋ねてくれた。
「大丈夫です。気遣っていただいて、ありがとうございます」
「いえいえ、どう致しまして。そういえば、さっきからずっと敬語で話していますね」
「そうですね」
佐々木さんが微笑んでいる。
「授業のことで、わからないことがあったら、何でも聞いてね」
「はい。どうもありがとうです」
私は佐々木さんと会話を続けた。
ひそひそ声は……聞こえなくなった。
クラスのみんなの視線も感じなくなった。
教室は、ガヤガヤとうるさくなった。
「佐藤さん、おはよう」
「久しぶりだね」
佐々木さんの友達の、小林さんと三村さんが、私に優しく声を掛けてくれた。
教室は、ガヤガヤとうるさいまま。
加藤くんと山中くんが、黒板の前で漫才をしている。
その漫才を見て、笑っている女子がいる。
このとき、私は思った。
自分の道は、自分の力で切り開くものだと。