透き通る季節の中で
 私が働いているスーパーには、いろんな店員さんがいる。

 私と同じ女子高生。
 男子高正。
 大学生。
 専門学生。
 浪人生。
 二十代、三十代の独身女性、独身男性。
 夢を追いかけながら働いているフリーター。
 子育て中の兼業主婦。
 独り身のおじさんやおばさん。
 定年退職後も働いている人。



 ほとんどの人は、勤務態度が真面目。テキパキと業務をこなしている。

 その中で、他の誰よりも、一生懸命に働いている人がいる。

 青葉春子さんという、二十八歳の女性。

 どうしてこんなに綺麗な人が、スーパーで働いているのか。と思ってしまうほどの美人さん。

 モデルさんのように背が高く、スリムな体型なのに胸が大きい。顔も髪も美しく、笑顔が素敵で可愛らしい。

 春子さんを目当てに来店するお客さんがいるほど。

 いつも春子さんのレジには行列ができている。他のレジは空いているのに。



 同僚の店員さんから聞いた話によると、春子さんは、二人の子を持つシングルマザー。

 上は四歳の女の子。下は三歳の男の子。

 昨年の秋、旦那様を亡くされて、それ以降、女手ひとつで二人のお子さんを育てているという。

 日中はスーパーのアルバイト。深夜はコンビニのアルバイト。

 生活費や養育費を稼ぐため、睡眠時間を削り、二つのアルバイトを掛け持ちしているという。

 春子さんは、辛いはずなのに、そんな素振りは全く見せない。

 いつも明るく元気に働いている。

 春子さんと私の歳は、一回りほど違うけど、愛する人を失った者として、春子さんには親近感を覚える。

 旦那様を亡くされて以来、何を考え、何を思い、どう過ごされてきたのか、とても興味がある。是非ともお話を伺いたい。



 私はまだまだ新米店員。下っ端のアルバイト。春子さんと友達になったわけでもない。

 挨拶と仕事の話はできるけど、踏み込んだ話はできない。

 いつか、機会があれば、春子さんとじっくり話してみたいと思う。
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