透き通る季節の中で
 二月十一日に行われた、校内マラソン大会の結果は、美咲が一位。まっちゃんが二位。友紀が三位。私が四位。長距離部の四人で上位を占めた。

 天性の才能なのか、練習量が減ったとはいえ、美咲は相変わらず速い。二位のまっちゃんに、三分以上の差をつけての圧勝。

 友紀とまっちゃんは、ものすごく悔しがっていて、来年こそは! と早くも意気込みを見せている。

 私は四位で満足。来年のマラソン大会も、四位でフィニッシュできればいいと思う。



 勉強と部活とアルバイトの両立、今のところは順調。

 一生懸命やれば、なんとかなるもの。

 また一つ自信が持てた。




 三月に入ってから、これまで元気に働いていた春子さんが、仕事を休むようになった。

 週六で働いていたのが、週二に減り、ホワイトデーを過ぎた辺りから、春子さんは来なくなってしまった。

 店長さんに聞いたところ、春子さんは、体調を崩し、自宅で療養しているという。

 それまでの無理が祟ったのではないか。と心配そうに言っていた。



 みんな、心配している。

 お客さんまで、心配している。

 お見舞いに行こうかどうか、私は考えた。

 考えた結果、やっぱり、やめておくことにした。



 お見舞いに行った人の話によると、春子さんは、うつ病になってしまったらしく、人に会いたがらないという。

 二人のお子さんは、元気な様子とのことで、春子さんの看護をしているという。



 春子さんが、うつ病になってしまった原因は、いくつかあると思う。

 その原因を、私なりに考えてみた。



 過労。
 睡眠不足。
 仕事のストレス。
 育児のストレス。
 経済的な不安。
 先の見えない不安感。
 旦那様との死別の苦しみ。

 この他にもまだあるかもしれない。



 幸いなことに、私はここまで元気になることができたけど、春子さんはまだ闘っている。

 必死に自分と闘っている。

 私はそう思う。



 もうすぐ桜が開花。

 春らしい陽気が続いている。

 亮太と一緒にお花見したかった。

 満開の桜並木の下、亮太と一緒に走りたかった。

 私の心残りの一つ。



 自宅で療養中の春子さんは、何を思い、何を考えているのだろう。
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