透き通る季節の中で
四月十八日の夕方、春子さんが、突然、出勤してきた。
私服姿のまま、フロアで働いている従業員の一人一人に挨拶して回っている。
お菓子の補充をしていた私にも、迷惑を掛けて、ごめんね。と言って声を掛けてくれた。
何か良いことでもあったのだろうか、春子さんは以前より元気な様子。
制服に着替えてフロアに出てきて、レジ打ちを始めた。
うつ病を患っていたとは思えないほど、生き生きとした表情で、レジをさばいている。
常連のお客さんに声を掛けられ、嬉しそうな顔をしている。
挨拶の声がどんどん大きくなっていく。
閉店後、春子さんは、従業員用の休憩室で同僚と楽しそうにおしゃべりを始めた。
声は明るく大きく、表情は笑顔。
奇跡が起きたのよ。奇跡が起きたのよ。嬉しそうな顔で繰り返し言っている。
同僚のみんなは、不思議そうな顔で春子さんの話に耳を傾けている。
私も春子さんの話に耳を傾けたものの、細かいことまではわからなかった。
春子さんが言っている、奇跡とはいったい何なのか。とても気になる。
どんな奇跡が起きたのか、確かめずにはいられない。
「あの、すみません」
従業員用の通用口から出てきた春子さんに声を掛けてみた。
「私に何か御用かしら?」
春子さんの声は相変わらず明るい。
「あの、さっき、春子さんが言っていた、奇跡とは何ですか?」
単刀直入に思い切って聞いてみた。
「ああ、さっきのことね。それが、話すと長くなるのよ」
「そうなんですか」
「うん。咲樹ちゃんは、どうして私の話に興味があるの?」
「それはですね」
不思議そうな顔で私を見つめている春子さんに、亮太のことを話してみた。
「そんな訳があったんだ」
春子さんは驚いたような顔をしている。
「はい。そういう訳なんです」
「咲樹ちゃんも辛い思いをしてるのね。ここで立ち話もなんだから、今からうちに来ない?」
「こんな遅くに大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ」
「それでは、お邪魔させていただきます」
春子さんは徒歩通勤。私は自転車通勤。
いったいどんな話が聞けるのだろう。と思いながら、私は自転車を押して、春子さんの後に続いて歩いた。
私服姿のまま、フロアで働いている従業員の一人一人に挨拶して回っている。
お菓子の補充をしていた私にも、迷惑を掛けて、ごめんね。と言って声を掛けてくれた。
何か良いことでもあったのだろうか、春子さんは以前より元気な様子。
制服に着替えてフロアに出てきて、レジ打ちを始めた。
うつ病を患っていたとは思えないほど、生き生きとした表情で、レジをさばいている。
常連のお客さんに声を掛けられ、嬉しそうな顔をしている。
挨拶の声がどんどん大きくなっていく。
閉店後、春子さんは、従業員用の休憩室で同僚と楽しそうにおしゃべりを始めた。
声は明るく大きく、表情は笑顔。
奇跡が起きたのよ。奇跡が起きたのよ。嬉しそうな顔で繰り返し言っている。
同僚のみんなは、不思議そうな顔で春子さんの話に耳を傾けている。
私も春子さんの話に耳を傾けたものの、細かいことまではわからなかった。
春子さんが言っている、奇跡とはいったい何なのか。とても気になる。
どんな奇跡が起きたのか、確かめずにはいられない。
「あの、すみません」
従業員用の通用口から出てきた春子さんに声を掛けてみた。
「私に何か御用かしら?」
春子さんの声は相変わらず明るい。
「あの、さっき、春子さんが言っていた、奇跡とは何ですか?」
単刀直入に思い切って聞いてみた。
「ああ、さっきのことね。それが、話すと長くなるのよ」
「そうなんですか」
「うん。咲樹ちゃんは、どうして私の話に興味があるの?」
「それはですね」
不思議そうな顔で私を見つめている春子さんに、亮太のことを話してみた。
「そんな訳があったんだ」
春子さんは驚いたような顔をしている。
「はい。そういう訳なんです」
「咲樹ちゃんも辛い思いをしてるのね。ここで立ち話もなんだから、今からうちに来ない?」
「こんな遅くに大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ」
「それでは、お邪魔させていただきます」
春子さんは徒歩通勤。私は自転車通勤。
いったいどんな話が聞けるのだろう。と思いながら、私は自転車を押して、春子さんの後に続いて歩いた。