透き通る季節の中で
 三月八日、予定通り、卒業旅行に出発した。

 大型の観光バスに乗り、スキー場に向かう。

 深夜に出発したので、明け方にスキー場に到着した。

 一面、白銀の世界。

 ふわふわの真っ白な雪が積もっている。



 まっちゃんは、自分で言っていたとおり、ものすごくスキーが上手。転ぶこともなく、悠々と滑っている。

 美咲は、ちょっと練習しただけで、滑れるようになり、すいすいすいすい滑っている。

 私と友紀は、まっちゃんに滑り方を教わったものの、滑れるようにならない。

 滑っては転んで。滑っては転んで。の繰り返し。

 いくら練習しても、全く上達しない。






「スキーはやめて! ソリで滑ろう!」
 業を煮やしたのか、友紀が大声で叫んだ。

 私もソリで滑ることにした。

「お子ちゃまの友紀には、ソリがお似合いね」

「何をおっしゃる美咲ちゃん。ソリを馬鹿にしたら、トナカイちゃんに頭を刈られて、ソリソリの頭になっちゃって、サンタさんのおじちゃんに、お尻をぺんぺんされちゃうわよ」

「訳のわからないことを言ってないで、早くソリを借りに行きなさいよ」

「はい! 背番号十八番! 青山友紀! ソリを借りに行ってきます!」

 友紀と私はソリを借りた。






 急な斜面を一気に直滑降。

 スキーは全くダメだけど、ソリなら滑れる。

 友紀と私は、ソリで滑りまくった。



 うほほーい!

 美咲とまっちゃんより速い速い!

 うほほーい!

 私はソリの達人よ!

 うほほーい!

 ほほほーい!

 うほほーい!

 ほほほーい!

 白銀のゲレンデに、友紀の叫び声がこだまする。





 美咲とまっちゃんVS友紀と私。二組に別れての雪合戦。
 雪の降る中での露天風呂。
 旅館の美味しいお食事。
 本気の枕投げ。
 生まれて初めてのお酒。ビールにワインに日本酒。
 深夜までの語り合い。
 


 楽しいはずなのに、楽しめない。

 美味しいはずなのに、美味しくない。

 せっかくの、卒業旅行なのに……
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