透き通る季節の中で
 学習塾に通うようになってからは、学校と家と塾を往復するだけの日々が続いた。

 私は今日も机に向かって勉強に励む。


「勉強ばかりしてないで、たまには絵でも描いてみたらどう?」
 千春が強い口調で私に言ってきた。私はちょっとムッとした。
「今は絵を描くことよりも勉強なのよ。千春も少しは勉強したらどうなの?」
「勉強なんて、学校の授業だけで十分だよ。じゃあ、あたしが絵を描くね」
 この日の千春は珍しく絵を描き始めた。
 
 赤色、ピンク色、オレンジ色、黄色、いろんな色の色鉛筆を使って、とてもカラフルな夕焼け空の絵を描いている。

 私はひたすら勉強に打ち込んでいる間に、絵はほとんど描かなくなってしまい、空を眺める時間も減っていた。

 久しぶりに窓から外を眺めてみたら、遠くの空が真っ赤に染まっていた。

 美しいとは思う。でも、夕焼け空の絵を描こうとは思わない。
< 15 / 268 >

この作品をシェア

pagetop