透き通る季節の中で
短大生活、初めての休日。
電車に乗って、地元に戻った。
入寮してから、まだ二週間しか経っていないのに、なんだか懐かしさを感じる。
美咲、友紀、まっちゃん、私との四人での食事会。
場所は、いつものファミレス。我が家に帰ったような気分。
「寮生活は順調?」
美咲がスプーンを置いて、私に尋ねてきた。
「今のところは順調だよ。寮の食事が思っていたより美味しくてさ」
「食事が美味しいのはいいわね。まっちゃんは仕事はどう?」
「まだ入社したばかりだから、覚えなければいけないことがたくさんあって、いろいろと大変なんだ」
「そっか。社会人になると大変なんだね」
「うん。大変だけど、充実してるわよ」
「美咲ちゃん、美咲ちゃん、私のことは聞かないの?」
「友紀はいいのよ。どうせ、お菓子を作ってるだけなんでしょ」
「おやおや、何をおっしゃる美咲ちゃん。お菓子作りを馬鹿にしたら、世界中のお菓子ちゃんが泣いちゃって、美咲ちゃんの好きなティラミスちゃんも他のお菓子ちゃんも涙味になっちゃうわよ」
「訳のわからないことを言ってないで、口の周りを拭きなさいよ」
「はーい! ガトーショコラ十九番! 青山友紀! 口の周りを拭きます!」
美咲と友紀のやり取りを間近で見ていると、なんだか安心する。
「美咲はどうなの?」
まっちゃんが美咲に尋ねた。
「まあ、ぼちぼちよ。陸上部がないのが残念だけどね」
「美咲の専門学校も、陸上部がないんだね」
「うん。バスケットボール部やバレーボール部はあるんだけどね」
「それよりさ、来週の土曜日の夜に、専門学校の友達と合コンに行く予定なんだけど、女子の人数が足りないって言ってたから、よかったら、参加してみない?」
友紀が話の途中で割り込んできた。
「あたしはやめておくね」
美咲は冷静に断った。
「来週の土曜日の夜は、家族で食事に行く予定だから」
まっちゃんも冷静に断った。
「あちゃー。美咲とまっちゃんに断られちゃったから、合コンに参加するのは、咲樹しかいないわね」
友紀が嬉しそうな顔で言った。
「私も遠慮しておくね」
「合コンに行けば、出会いのチャンスがあるんだよ。咲樹は、誰かと付き合ったほうがいいんじゃないかな」
友紀の言っていることは、わからなくもない。私を思ってのことだと思う。でも、合コンに行く気にはなれない。そもそも、合コンなんて行きたくない。
今は、新しい環境に慣れるのに精一杯。
恋をしている暇はない。
といういより、恋は……しばらくいい。
「咲樹が困った顔をしてるわよ」
美咲が友紀に言ってくれた。
「合コンの話はいいから、マラソンの話をしようよ」
まっちゃんが話題を変えてくれた。
「じゃあ、また今度だね」
友紀は諦めてくれた。
四人で話し合い、月に二回、練習会を行うことになり、十月に開催される、市民マラソン大会に出場することになった。
「今年中に彼氏を作るぞ!」
友紀が突然、大きな声で叫んだ。
「急に叫ばないでよ。ビックリするじゃない」
美咲が冷静に突っ込んだ。
まっちゃんは、クスクス笑っている。
私も思わず笑ってしまった。
周りのお客さんが、私たちを見ている。
ウェイトレスさんも、私たちを見ている。
恥ずかしいけど、なんだか嬉しい。
友紀も美咲もまっちゃんも、早く誰かと付き合ってほしいと思う。
付き合ってくれれば、肩の荷が降りるから。
電車に乗って、地元に戻った。
入寮してから、まだ二週間しか経っていないのに、なんだか懐かしさを感じる。
美咲、友紀、まっちゃん、私との四人での食事会。
場所は、いつものファミレス。我が家に帰ったような気分。
「寮生活は順調?」
美咲がスプーンを置いて、私に尋ねてきた。
「今のところは順調だよ。寮の食事が思っていたより美味しくてさ」
「食事が美味しいのはいいわね。まっちゃんは仕事はどう?」
「まだ入社したばかりだから、覚えなければいけないことがたくさんあって、いろいろと大変なんだ」
「そっか。社会人になると大変なんだね」
「うん。大変だけど、充実してるわよ」
「美咲ちゃん、美咲ちゃん、私のことは聞かないの?」
「友紀はいいのよ。どうせ、お菓子を作ってるだけなんでしょ」
「おやおや、何をおっしゃる美咲ちゃん。お菓子作りを馬鹿にしたら、世界中のお菓子ちゃんが泣いちゃって、美咲ちゃんの好きなティラミスちゃんも他のお菓子ちゃんも涙味になっちゃうわよ」
「訳のわからないことを言ってないで、口の周りを拭きなさいよ」
「はーい! ガトーショコラ十九番! 青山友紀! 口の周りを拭きます!」
美咲と友紀のやり取りを間近で見ていると、なんだか安心する。
「美咲はどうなの?」
まっちゃんが美咲に尋ねた。
「まあ、ぼちぼちよ。陸上部がないのが残念だけどね」
「美咲の専門学校も、陸上部がないんだね」
「うん。バスケットボール部やバレーボール部はあるんだけどね」
「それよりさ、来週の土曜日の夜に、専門学校の友達と合コンに行く予定なんだけど、女子の人数が足りないって言ってたから、よかったら、参加してみない?」
友紀が話の途中で割り込んできた。
「あたしはやめておくね」
美咲は冷静に断った。
「来週の土曜日の夜は、家族で食事に行く予定だから」
まっちゃんも冷静に断った。
「あちゃー。美咲とまっちゃんに断られちゃったから、合コンに参加するのは、咲樹しかいないわね」
友紀が嬉しそうな顔で言った。
「私も遠慮しておくね」
「合コンに行けば、出会いのチャンスがあるんだよ。咲樹は、誰かと付き合ったほうがいいんじゃないかな」
友紀の言っていることは、わからなくもない。私を思ってのことだと思う。でも、合コンに行く気にはなれない。そもそも、合コンなんて行きたくない。
今は、新しい環境に慣れるのに精一杯。
恋をしている暇はない。
といういより、恋は……しばらくいい。
「咲樹が困った顔をしてるわよ」
美咲が友紀に言ってくれた。
「合コンの話はいいから、マラソンの話をしようよ」
まっちゃんが話題を変えてくれた。
「じゃあ、また今度だね」
友紀は諦めてくれた。
四人で話し合い、月に二回、練習会を行うことになり、十月に開催される、市民マラソン大会に出場することになった。
「今年中に彼氏を作るぞ!」
友紀が突然、大きな声で叫んだ。
「急に叫ばないでよ。ビックリするじゃない」
美咲が冷静に突っ込んだ。
まっちゃんは、クスクス笑っている。
私も思わず笑ってしまった。
周りのお客さんが、私たちを見ている。
ウェイトレスさんも、私たちを見ている。
恥ずかしいけど、なんだか嬉しい。
友紀も美咲もまっちゃんも、早く誰かと付き合ってほしいと思う。
付き合ってくれれば、肩の荷が降りるから。