透き通る季節の中で
 嬉しいことが続くときは続く。

 七回目の練習会のとき、まっちゃんから嬉しい報告を受けた。

 お母さんの紹介で知り合った男性と交際を始めたという。

 職業は、普通の会社員。まっちゃんのように、高卒で働いていて、釣りを趣味にしているという。

 まっちゃんがとっても嬉しそうに、彼の写メを見せてくれた。

 誠実そうで優しそうな人。まっちゃんにお似合いの人だと思う。

 市民マラソン大会のとき、彼を連れてきてくれるという。



 いいな♪ いいな♪ 羨ましいな♪ いいな♪ いいな♪ 彼氏が出来て羨ましいな♪

 友紀がノリノリで歌い始めた。

 まっちゃんは、照れくさそうにしている。

「何、その歌」
 すかさず美咲がツッコミを入れた。
 
「彼氏が出来て羨ましいな♪ の歌よ」

「そのままじゃん」

「二番もあるから、聴いてくれる?」

「聴かなくても歌うんでしょ」

「歌うわよ」

 ハピパピハッピー♪ ハピハピハッピー♪ 素敵な王子様と出会えたまっちゃんの人生はバラ色よ♪ ハピパピハッピー♪ ハピハピハッピー♪ 私もハピハピハッピーになりたいわ♪

「一番の歌詞とぜんぜん違うじゃん」

「三番まであるから、聴いてくれる?」

「お馬鹿な友紀はほっといて、ファミレスに行きましょう」

「おやおや美咲ちゃん。私を置いていったら、置いてけぼりババアに、太ももを食べられちゃうわよ」

 美咲は友紀を無視して、ファミレスに向かって歩き始めた。

 まっちゃんは、顔を真っ赤にしている。



 美咲はどうして彼氏を作らないのか。相変わらず、モテるというのに。

 私が誰かと付き合うまで、誰とも付き合わないようにしているのか。

 美咲に直接聞いてみないとわからないけど、もし、そうだとしたら……



 彼氏が出来たら、毎日が楽しくなると思う。

 今以上に頑張れると思う。

 でも、私はまだ……



 今年の秋で、三年。

 三年という歳月は、長いのか……短いのか……
< 160 / 268 >

この作品をシェア

pagetop