透き通る季節の中で
 九月から、本格的に就職活動を始めた。

 希望する会社は、書類選考で落とされてしまう。採用試験を受けることすらできない。不採用通知の手紙が届く毎日。

 大手は諦めて、中堅スポーツメーカーにターゲットを絞ったものの、採用試験で落とされてしまう。

 短大卒では厳しいのか、自分の力不足なのか、高望みしすぎたのか、就職氷河期だからなのか。



 里中さんは、化粧品メーカーへの就職が決まり、角田さんは、デパートへの就職が決まった。

 就職氷河期にも関わらず、同級生は次々と就職が決まっていく。

 私は一社も受からず、気持ちは焦るばかり。

 スポーツ用品メーカーへの就職は諦めて、多種多様な靴を製造している会社の面接を受けてみた。

 結果は、採用。靴会社への就職が決まった。

 職種は、一般事務。

 主な仕事は、書類作成・伝票整理・電話対応など。

 不本意だけど、生活していくために、頑張って働かなければならない。




 
 三月十日、寮を出て、ワンルームマンションに引っ越した。

 会社までは、徒歩と電車で四十五分。

 家賃は、五万五千円。

 調理器具、食器、寝具、薄型テレビ、DVDプレーヤー、ミニコンポ、冷蔵庫、洗濯機。一人暮らしに必要な生活必需品をまとめて購入した。

 貯金はまだあるけど、実家からの仕送りは、今月まで。

 仕事が軌道に乗るまでは、生活を切り詰めなければならない。

 四月から、私も社会人。

 期待と不安が入り混じる。
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