透き通る季節の中で
 少しでも緊張をほぐそうと、メニュー表を見ながら待っていたところ、三人の男性が向かいの席に座った。

「私が紹介しますね」
 椎名さんが、一人ずつ順番に紹介してくれた。

 私から見て、右側の男性が、長谷川直也さん。職業は、IT関連会社の会社員。

 真ん中の男性が、峰岸高志さん。職業は、製薬会社の営業。

 左側の男性が、安藤新地さん。職業は、大工さん。

 三人とも、高校時代にサッカー部に入っていたとのことで、椎名さんはマネージャーだったらしい。

 今現在、長谷川さんと峰岸さんは、フットサルをやっているとのこと。

 男性陣もラフな服装。

 私は自分の経験の無さを思い知る。





「それでは、私の隣に座っている、二人の女性を紹介します。真ん中の席の女性が、私の専門学校時代の同級生の青山友紀さんで、通路側の席の女性が、友紀の高校生時代の同級生の佐藤咲樹さんです」

 友紀が会釈をしたので、私も会釈をした。

「みなさん初めまして。私はパティシエールをしている青山友紀です。お酒はまあまあ強いほうだと思っています。今夜もじゃんじゃん飲みまくろうと思います」
 合コン慣れしている友紀は、いつもこんなふうに自己紹介をしているのだろうか。

「咲樹さんも、簡単に自己紹介をしてもらえますか」
 椎名さんに促された。

「あ、はい」
 私は一呼吸置いた。

「こんばんは。初めまして。佐藤咲樹です。靴会社で事務員をしています。よろしくお願いします」
 早口になってしまって、すごく恥ずかしい。

 長谷川さんも峰岸さんも安藤さんも、笑顔で拍手を送ってくれている。

 緊張はほぐれないけど、ちょっとホッとした。
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