透き通る季節の中で
「お仕事帰りなんですか」

 どうしていいのかわからず、生ビールを飲んでいたところ、安藤さんが私に話し掛けてきた。

「い、いえ。合コンに参加するのは初めてですので、何を着ていけばいいのかわからなくて、スーツを着てきたんです」
 また早口になってしまって、すごく恥ずかしい。

「佐藤さんは初めてなんですね。僕は三回目になりますが、今日も無理やり連れて来られたんです」
 安藤さんの話し方は、とても穏やか。場慣れしているのだろうか、落ち着いているように見える。
 
「そうなんですか。私も無理やり連れて来られたような感じなんです」
 安藤さんも私と同じだと知って、ようやく緊張がほぐれてきた。

「佐藤さんもですか。あの調子なら、別に僕たちが来なくてもよかったのにね」
 安藤さんが言ったとおり、友紀たちは盛り上がっている。

「そうですね」
 同調せずにはいられない。

「もう少し飲んだら、帰ろうと思っています」

「そうですか。では、私もそのときに帰ります」

 帰るタイミングがわかって、ホッとしていたところ、安藤さんが生ビールをおかわりした。

 私はまだ一杯目。

 いつの間にか、友紀の前には、空のジョッキがいっぱい。

 椎名さんも長谷川さんも峰岸さんも、楽しそうに会話しながら、生ビールを飲んでいる。
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