透き通る季節の中で
窓越しに、ぼんやりと海を見つめていたところ、店員さんが料理を運んできた。
「やっと来ましたね。それでは、いただきましょうか」
「はい。いただきます」
安藤さんも私も海鮮パスタから食べ始めた。
景色も良いので最高に美味しい。
お腹がペコペコなので、あっという間に平らげてしまった。
安藤さんより早く食べてしまって恥ずかしい。
「どうもご馳走様でした」
安藤さんがお会計をしてくれている間に、私は化粧室に入った。
ヘルメットで潰れた髪を整えて、軽くメイクを直した。
「どうもお待たせしました」
「海風に当たりに行きませんか」
「はい」
二人で海岸に降りて、石の階段に座った。
夏真っ盛り。
浜辺は多くの海水浴客で賑わっている。
潮の香りのする海風がとても心地よい。
「海を眺めていると、心が落ち着きますね」
安藤さんが穏やかな声でつぶやくように言った。表情も穏やか。
「そうですね」
私は……海に思い出がある。
安藤さんも、海に思い出があるのだろうか。
そう考えている間に、安藤さんが飲み物を買ってきてくれて、私にいろんなことを話してくれた。
オートバイのこと
友達のこと
家族のこと
映画のこと
仕事のこと
長年付き合っているかのように、どんなことでも話してくれる。
安藤さんが、普通自動二輪免許を取得したのは、十七歳の夏。
初めて買ったオートバイは、50ccのスクーター。
乗り慣れるまで、何度も転んだという。
現在乗っている、CBRは七台目。
大型自動二輪免許も持っているとのこと。
友達はいっぱいいるという。
バイク仲間も大勢。
合コンに来ていた長谷川さんと峰岸さんとは親友とのこと。
実家暮らしで、家族とは仲が良いという。
お父さんもお兄さんも大工さん。
映画が好きで、週に二本は観ているという。
クリントイーストウッドの大ファンらしい。
大工さん暦は、九年。
中学生の頃から、お父さんの仕事を手伝い、高校卒業後、地元の工務店に就職したとのこと。
夢は、自分の工務店を持つこと。
「僕ばかり話してしまって、どうもすみません」
「いいんですよ。安藤さんのお話を聞けて、とても楽しいです」
「そう言ってもらえると嬉しいです。帰りは渋滞しますので、早めに帰りましょうか」
「はい」
帰りは家まで送ってもらった。
「ヘルメットをありがとうございました」
「そのヘルメットは、佐藤さんにプレゼントします」
「え、いいんですか」
「はい。持っていてください」
「そうですか。どうもありがとうございます」
安藤さんは、恥ずかしそうにしている。
「もしよかったら、またツーリングに行きませんか」
「はい。喜んで」
「夜にメールしますね」
「はい。待ってます」
安藤さんはヘルメットを被り、颯爽とオートバイにまたがった。
ブオン!
アクセルをふかし、急発進。
安藤さんの姿はあっという間に見えなくなってしまった。
言葉では表現しにくい、甲高いエンジン音が聞こえてくる。
他のオートバイの音はうるさく聞こえるのに、安藤さんのオートバイの音は心地よく聞こえる。
安藤さんがプレゼントしてくれたヘルメットをよく見てみたら、側面にレタリングシールが貼られてあった。
アルファベットで、SATOUSAKI。
筆記体で、色は白色。
とにかく嬉しくて嬉しくて仕方がない。
ヘルメットを被って家に入った。
私もいつか、普通自動二輪免許を取得しようと思う。
「やっと来ましたね。それでは、いただきましょうか」
「はい。いただきます」
安藤さんも私も海鮮パスタから食べ始めた。
景色も良いので最高に美味しい。
お腹がペコペコなので、あっという間に平らげてしまった。
安藤さんより早く食べてしまって恥ずかしい。
「どうもご馳走様でした」
安藤さんがお会計をしてくれている間に、私は化粧室に入った。
ヘルメットで潰れた髪を整えて、軽くメイクを直した。
「どうもお待たせしました」
「海風に当たりに行きませんか」
「はい」
二人で海岸に降りて、石の階段に座った。
夏真っ盛り。
浜辺は多くの海水浴客で賑わっている。
潮の香りのする海風がとても心地よい。
「海を眺めていると、心が落ち着きますね」
安藤さんが穏やかな声でつぶやくように言った。表情も穏やか。
「そうですね」
私は……海に思い出がある。
安藤さんも、海に思い出があるのだろうか。
そう考えている間に、安藤さんが飲み物を買ってきてくれて、私にいろんなことを話してくれた。
オートバイのこと
友達のこと
家族のこと
映画のこと
仕事のこと
長年付き合っているかのように、どんなことでも話してくれる。
安藤さんが、普通自動二輪免許を取得したのは、十七歳の夏。
初めて買ったオートバイは、50ccのスクーター。
乗り慣れるまで、何度も転んだという。
現在乗っている、CBRは七台目。
大型自動二輪免許も持っているとのこと。
友達はいっぱいいるという。
バイク仲間も大勢。
合コンに来ていた長谷川さんと峰岸さんとは親友とのこと。
実家暮らしで、家族とは仲が良いという。
お父さんもお兄さんも大工さん。
映画が好きで、週に二本は観ているという。
クリントイーストウッドの大ファンらしい。
大工さん暦は、九年。
中学生の頃から、お父さんの仕事を手伝い、高校卒業後、地元の工務店に就職したとのこと。
夢は、自分の工務店を持つこと。
「僕ばかり話してしまって、どうもすみません」
「いいんですよ。安藤さんのお話を聞けて、とても楽しいです」
「そう言ってもらえると嬉しいです。帰りは渋滞しますので、早めに帰りましょうか」
「はい」
帰りは家まで送ってもらった。
「ヘルメットをありがとうございました」
「そのヘルメットは、佐藤さんにプレゼントします」
「え、いいんですか」
「はい。持っていてください」
「そうですか。どうもありがとうございます」
安藤さんは、恥ずかしそうにしている。
「もしよかったら、またツーリングに行きませんか」
「はい。喜んで」
「夜にメールしますね」
「はい。待ってます」
安藤さんはヘルメットを被り、颯爽とオートバイにまたがった。
ブオン!
アクセルをふかし、急発進。
安藤さんの姿はあっという間に見えなくなってしまった。
言葉では表現しにくい、甲高いエンジン音が聞こえてくる。
他のオートバイの音はうるさく聞こえるのに、安藤さんのオートバイの音は心地よく聞こえる。
安藤さんがプレゼントしてくれたヘルメットをよく見てみたら、側面にレタリングシールが貼られてあった。
アルファベットで、SATOUSAKI。
筆記体で、色は白色。
とにかく嬉しくて嬉しくて仕方がない。
ヘルメットを被って家に入った。
私もいつか、普通自動二輪免許を取得しようと思う。