透き通る季節の中で
 まだ五時過ぎ。

 近所のレンタルDVD屋さんに行って、ヒアアフターを借りてみた。

 監督は、クリントイーストウッド。

 製作総指揮、スティーヴンスピルバーグ。

 主演は、マットデイモン。

 スピリチュアルファンタジードラマ。



 ワインを飲みながら、ヒアアフターを鑑賞した。

 マットデイモン扮する霊能者が、死者と交信できる。手を握っただけで人の過去が見えてしまう。という霊能力に苦しみながらも、前を向いて生きていこうとする姿が描かれている。

 インドネシアでバカンス中、大津波に襲われて、臨死体験をしたテレビキャスターの女性。

 兄を亡くした双子の弟。

 料理教室で知り合った辛い過去を持った女性。

 主人公のマットデイモン。

 四人の複雑な思いが交差する。



 マットデイモンが、双子の兄と交信する場面で涙した。

 ラストはハッピーエンドだった。

 良い映画だと思った。

 自分と同じ境遇の人に観てもらいたい。とも思った。

 春子さんに勧めてみようと思う。




 
 

 安藤さんは、どうしてヒアアフターを観たのだろう。

 ただ単に、映画が好きだからなのか。

 クリントイーストウッドの大ファンだからなのか。

 何か訳があるのか。



 どうにも気になってしまい、友紀に電話して、椎名さんの携帯番号を教えてもらった。

 案の定、何かあったの? と聞かれた。

 合コンのお礼を言い忘れていたから、直接、椎名さんにお礼を言おうと思ってね。と言って交わした。

 友紀は納得してくれた。



 さっそく椎名さんに電話して、安藤さんの過去を聞いてみた。

 安藤さんは、高校時代、彼女がいたという。

 九年前の夏、病気でお亡くなりになられたらしい。

 過去は知り過ぎないほうがいい。

 安藤さんが言っていた意味がわかった。

 今の話は、なかったことにしてもらえませんか。椎名さんにお願いしてみた。

 わかりました。なかったことにします。と言ってくれた。



 安藤さんが私に話してくれるまでは、何も聞かない。

 安藤さんが私の過去を知ったときは、正直に話す。

 じっくりと考えて、そう決めた。
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