透き通る季節の中で
 気を失っていたのだろうか、携帯の着信音で目が覚めた。

 ずっとずっと鳴っている。

 着信ランプが点滅しっぱなし。

 体を起こして、スマホの応答ボタンを押した。



「咲樹!」
 友紀の声。

「長谷川さんから聞いたよ。本当に、どうしてなんだろうね」
 悲しそうな声で話している。



 長谷川さん……。

 残念だけど、長谷川さんと話したことは覚えている。

 話した内容も覚えている。

 友紀も知っているということは……夢ではなかったということ。

 新地は……





「もしもし」

「咲樹?」

「うん」

「ああー、声が聞けてよかった」

「ごめん、気を失っていたみたいなんだ」

「大丈夫? ごめん、大丈夫なわけがないよね」

「私なら大丈夫だよ。心配かけて、ごめんね」

「大丈夫じゃないでしょ? 今から家に行こうか?」

「本当に大丈夫だよ。心配してくれて、ありがとね」

「何を水臭いこと言ってるのよ。私と咲樹の中でしょ」

「うん。そうだね。眠いから、電話切っていいかな」 

「やっぱり家に行くね」

「来なくていいってば。お願いだから、一人にさせて」

「…………わかった。起きたら、必ず私に連絡するんだよ」

「うん。必ず連絡するから」

「約束だよ。絶対に約束だよ」

「うん。約束する。じゃあ、またね」

 通話終了ボタンを押した。

 時刻は、二時三十七分。



 気を失うまでは、ずっと起きていたから、眠いのは眠い。

 すごく眠いけど、眠れない。






 新地は……新地は……新地は……



 私がインフルエンザに掛からなければ……

 部屋にいたら、もったいないよ。なんて言わなければ……

 一緒に映画を観ていれば……

 新地は、死ななかった。絶対に死ななかった。

 私は、どうしようもない馬鹿だ。



 考えたくないけど、どうしても考えてしまう。

 幼少時代に好きだった男の子

 高校時代に付き合っていた彼

 そして、新地
 
 好きになった人や付き合った人が、次々と死んでいく。

 私は、呪われているのだろうか。

 そう思わざるを得ない。
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