透き通る季節の中で
 恐怖と悲しみと自分への怒り。そして、後悔。

 いったいなぜなのか。

 悪いことは、何もしていないのに。

 考えれば考えるほど、わからなくなってくる。

 眠れないまま、朝を迎えてしまった。



 今日も朝から晴れている。

 窓の外は、さわやかな秋晴れが広がっている。

 オートバイの音は、聞こえてこない。

 新地は、一向に帰ってこない。

 その現実が、心に重く圧し掛かる。

 私は、これから、どうするべきなのか。

 空を見上げながら、真剣に考えてみた。



 十一年前の二の舞にならないように。



 友紀にメールを送って、顔を洗った。

 クローゼットから、礼服を取り出した。

 ハンカチにアイロンを掛けた。

 冷めたオムライスを一人で食べた。

 新地が持ってきてくれた果物も食べた。

 ライダースーツ姿でオートバイにまたがっている新地の待ち受け画像。

 スマホの画面を見つめながら、長谷川さんからの連絡を待った。



 夜の十一時過ぎ、長谷川さんからの着信が入った。

 お通夜とお葬式の日時と場所を教えてくれた。

 今は何も考えないように。何度も自分に言い聞かせた。

 お風呂に入って体を洗った。

 ドライヤーで髪を乾かした。

 ベッドに入って横になった。
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