透き通る季節の中で
 想像以上に、オートバイの運転は難しい。

 スムーズにクラッチを繋ぐことができず、エンストの嵐。

 何度も何度も立ちごけした。

 私は力が弱いので、重たいオートバイを起こすのは、かなり大変な作業。

 教習が終わった後、ジムに行って、筋力トレーニングに励んだ。



 教習を重ねていくうちに、オートバイを乗りこなせるようになってきた。

 一人でオートバイを起こせるようになった。

 フットブレーキでの坂道発進も出来るようになった。

 教習開始から、三十七日目にして、ようやく卒業することが出来た。

 筆記試験に合格し、普通自動二輪免許を取得できた。
 




 

 新地が乗っていた、CBRを買うため、オートバイショップに足を運んだ。

 いきなりCBRは無理かと。もう少し小さなバイクにしませんか。オートバイショップの店員さんに言われた。

 CBR以外のオートバイには乗りたくないんです。と言って、オートバイショップの店員さんに頭を下げた。

 わかりました。と言ってくれた。

 CBR400Rを購入した。新地が乗っていたのと、同型同色。ブラックメタリック。

 自賠責保険と任意保険に加入して、念のために盗難保険にも加入した。

 新地のヘルメットも買った。もちろん、色は白。

 ヘルメットを抑えるネットとレタリングシールも買った。

 本屋さんに寄って、オートバイの本と日本地図を買った。





 家に帰り、新地のヘルメットをテーブルの上に置いた。

 ANDOSHINJI

 アルファベットで筆記体。
 
 新地のヘルメットの側面に、レタリングシールを貼った。



 CBRを乗りこなせるようになったら、旅に出る。

 新地と一緒に旅をする。

 二人でいろんな道を走る。

 二人でいろんな風を感じる。

 新地にいろんな風をプレゼントする。



 これから数ヶ月間、好きなようにさせてもらう。

 気が済むまで、好きなようにさせてもらう。

 自己満足だと言われてもいい。

 悔いを残さないように、とことん走る。

 自分で選んだ道。

 後悔は全くしていない。
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