透き通る季節の中で
 購入日から三日後に、オートバイショップの店員さんが、CBRを運んできてくれた。

 加速がすごいので、発進時は気をつけてください。

 乗り慣れるまでは、ゆっくり走ってください。

 オイル交換は、こまめにしてください。

 いろいろとアドバイスをしてくれて、何かあったら、いつでも連絡してくださいと言ってくれた。



 いきなりCBRに乗るのは、確かに怖い。

 まずは、一人で練習。

 

 ライダースーツを着て、ブーツを履き、グローブをはめて、ヘルメットを被り、運転席にまたがった。

 転ばないように、ゆっくり走る。

 事故を起こさないように、疲れたら休む。

 アクセルを軽く回して、ゆっくりと発進させた。

 オートバイショップの店員さんが言っていたとおり、ものすごい加速。教習車のオートバイより加速がすごい。

 反動と風圧で体が仰け反ってしまう。

 新地のように、姿勢は低く。前傾姿勢で運転する。

 休憩を挟みながら、日が沈むまで走った。

 エンストをすることもなく、立ちごけをするこもなかった。坂道発進もスムーズに出来た。

 私でも乗れる。

 少し自信を持てたような気がする。







 二日目は、朝から夕方まで走った。

 三日目も、朝から夕方まで走った。

 四日目は、夜道を走った。

 五日目も、夜道を走った。

 六日目は、思い切って、高速道路を走ってみた。

 七日目は、カーブの多い山道。



 まだまだ新地のように運転することはできないけど、乗り慣れてきたのか、オートバイの運転が楽しいと思えるようになってきた。

 年内は、一人で練習。

 年明けから、新地と一緒に旅に出る。

 CBRと一体化して、私は新たな風になる。



 大晦日の午後、CBRに乗って、新地のお墓参りに向かった。

 私が来る前に誰か来たのだろうか、お花が添えられていて、お線香が焚かれている。

「新地、お参りに来たよ」

 私もお花を添えて、お線香を焚いて、目を閉じて手を合わせた。

「明日から、CBRに乗って旅に出るよ。よかったら、私の後ろに乗ってね」

 私の声が、新地に届いたと思って、予定どおり、明日から旅に出る。
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