透き通る季節の中で
 元日の午前五時、新地のヘルメットを持って家を出た。

 外は凍てつくような寒さ。吐く息が真っ白。

 悴む手で新地のヘルメットを後部座席に乗せて、落ちないようにネットで固定した。
 
「それじゃあ、出発するからね。私の体を掴んでね」

 新地のヘルメットに話し掛けて、運転席にまたがった。

 ブオン! ブオン! ブオン!

 アクセルを吹かし、ゆっくりと発進させた。

 向かうのは、初めて新地と一緒に走った海岸線。

 後部座席に新地が乗っていてくれていると思って走る。

 私が冷たい風を遮る。






 一般道を走り続けて、夜明け前に海岸線に着いた。

 初日の出ライダーなのだろうか、いろんなオートバイの音が聞こえてくる。

 私はまだまだ初心者ライダー。ベテランライダーに混じって走るのは怖い。

 新地が後ろに乗っているから大丈夫。

 そう自分に言い聞かせて、信号が青になった瞬間、アクセルを吹かし、一気に発進させた。

 一速で二十キロ。

 二速で五十キロ。

 三速で八十キロ。

 四速で百キロ。

 横からの海風が強い。

 これ以上、スピードを上げるのは、危険で怖い。

 警察に捕まってしまったら、元も子もない。

 そんなに飛ばして大丈夫?

 新地も怖がっていると思う。



 速度を緩めて、海岸線を走り続けているうちに、水平線から初日の出が昇ってきた。

 オレンジ色の初日の出。

 辺りは一面、オレンジ色に染まっている。

 ヘルメットのバイザー越しに見える初日の出は、なんとも言えない美しさ。

 あの美しい初日の出を、新地も見つめているのだろうか。

 そう思いながら、一直線の海岸線を走り続けた。
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