透き通る季節の中で
 新地と初めて一緒に食事をしたレストランは、営業している。

 駐車場は空いていて、行列はできていない。

 店内に入ったところ、お一人様ですか? 店員さんに聞かれた。

 二人です。と言って答えた。

 好きな席にお座りください。店員さんは不思議そうな顔で言った。

 あの時と同じ窓際のカウンター席に座り、新地のヘルメットをカウンターの上に置いた。

 メニューもあの時と同じ。もちろん、新地の分も注文する。

 

 新地のヘルメットを抱きかかえて、窓越しに海を見つめていたところ、店員さんが料理を運んできてくれた。

 同じメニューが二つ。ホットコーヒーは二杯。

 不思議そうな顔で私を見つめている。

「じゃあ、食べようか」

 返事がなくても話し掛ける。

 新地に私の声が聞こえていると思って話し掛ける。

 他人に変に思われても気にしない。
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