透き通る季節の中で
 寂しいけど、お別れの時。

 新地のヘルメットを後部座席に乗せて、出発の準備を済ませた。



「姉さんとちゃとらんに出会えて、本当に良かったです。いろいろとありがとうございました」

「お礼を言うのは、あたしたちのほうだよ。本当にいろいろとありがとうね」

「にゃあ、にゃあ、にゃあ」

「ちゃとらんもお礼を言ってるよ」

「あはは。これから、どこに行くんですか?」

「だいぶ寒くなってきたから、南へ行こうかな」

「南といいますと、四国や九州ですか?」

「うん。その辺りね」

「またいつか逢えますよね」

「うん。関東に戻ったら、咲樹ちゃん家に行くね」

「はい。楽しみにしています」

「それじゃあ、またね」

「ちゃとらん、ばいばい。またね」

「にゃにゃにゃん」

「寂しいよ。って言ってるよ」

「本当ですか?」

「いやあ、なんとなくね。最後に一つだけ言わせて」

「はい」

「前という言葉は、前を向いて生きていくためにある。じゃあね」

 姉さんとちゃとらんは、前を向いて歩き始めた。



「ちゃとらんは、どこに行きたい?」

「にゃにゃにゃにゃにゃあ」

「鹿児島だね」

「にゃあ、にゃあ、にゃあ」

「それじゃあ、鹿児島に行こう」



 まさに風に吹かれるまま。気の向くまま。

 姉さんこそ、真の自由人。



 ああいう生き方もあるんだな。

 私には、できない生き方。

 姉さんのように、私も強く生きられたら。

 もっともっと強くなりたい。

 どんな困難にも負けないくらいの強い心を持ちたい。

 

 前という言葉は、前を向いて生きていくためにある。
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