透き通る季節の中で
 霊園の中をゆっくりと歩いて、新地のお墓の前に立った。

「こんにちは。新地。プレゼントを持ってきたよ」

 缶を開けて、ジップロックを取り出した。

「奥日光で拾ってきた落ち葉だよ。二十八枚、入ってるからね」

 ジップロックを缶に戻して、新地のお墓にお供えした。

 お花も添えて、お線香を焚いて、目を閉じて手を合わせた。



 さようなら。新地。私を成長させてくれて、ありがとう。

 声には出せず、心の中でつぶやいた。



 絶対に後ろは振り返らない。

 前を向いて歩く。

 空を見上げながら歩くんだ。
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