透き通る季節の中で
 七月十五日、月曜日、海の日。

 姉さんからの小包が届いた。

 黒豚の燻製と手紙が入っている。

 その手紙をさっそく読んでみた。

 すごく字が汚い。

 まるでミミズのような文字。

 でも、読めないことはない。



 はろはろ。

 元気にしてるかい。

 鹿児島にいるよ。

 あたしもちゃとらんも元気だよ。

 あちこち行って、だいぶウロウロしたから、一年八ヶ月くらいかかっちゃった。

 頭が良くなるかと思って、ちゃとらんと一緒に桜島の噴火口に飛び込んでみたんだ。

 全身大火傷だよ。

 包帯ぐるぐるだよ。

 冗談だからね。

 屋久島にも行ってみたんだ。

 ちゃとらんと一緒に山道を歩いて、縄文杉を見てきたよ。

 別にどうってことはなかったよ。

 屋久島に行くなら、白谷雲水峡という苔むした森に行くといいよ。

 すごく美しい森だよ。

 コダマの前で歌ってみたよ。

 巨大なイノシシと戦ってみたよ。

 どっちも冗談だよ。

 これから、北へ向かおうかと思ってるんだ。

 途中で、咲樹ちゃん家に寄るね。

 いつになるかわからないから、気長に待っててね。

 旅の空にて 佐藤さき&ちゃとらん



 手紙の裏側に、ちゃとらんの手形が押されている。

 相変わらずの旅暮らし。

 本当に、たくましい人と猫だと思う。

 こちらから連絡が取れないのが残念。

 私もいつか、屋久島に行ってみたいと思う。
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