透き通る季節の中で
 食事会の席で、カモメの話をしたところ、みんなカモメにかっぱえびせんをあげてみたいと言った。

 カモメに興味を持ってくれたことは、とても嬉しい。

 みんなで話し合い、今度の土曜日に、カモメを見に行こうということになった。

 友紀とまっちゃんは、家族同伴で参加するという。

 第一子を妊娠中の美咲は、旦那さんと一緒に。

 せっかくなので、春子さん親子も誘ってみた。

 ネットで調べたところ、東京湾フェリーに乗れば、多くのカモメが見られることがわかった。

 ちょっとした、カモメ見学ツアー。

 友紀の子供もまっちゃんの子供も日菜子ちゃんと寛太くんも喜んでくれると思う。

 私はツアーガイド役。

 さっそくスーパーに行って、かっぱえびせんを大量に買い込んだ。

 レジの店員さんが、あなたはそんなにかっぱえびせんが好きなんですか。と言わんばかりの顔をしている。

 ちょっと恥ずかしかった。








 十二月九日、土曜日。

 幸いなことに、天気は晴れ。

 空気は冷たいけど、日差しはたっぷりある。

 予定どおり、みんなで東京湾フェリーに乗った。

 私たち以外にも、カモメ目当てでフェリーに乗った人たちがいる。

 その人たちも、かっぱえびせんを持っている。カメラを持っている人もいる。

 かっぱえびせんを持って、船尾から空を見上げていたところ、多くのカモメが集まってきた。

 甲高い鳴き声を上げながら、群れをなして羽ばたいている。

 早くかっぱえびせんを投げてよ。とでも言っているかのように。

 私の顔を覚えてくれたのか、食いしん坊ちゃんらしきカモメも飛んできた。

 確かに、食いしん坊ちゃん。額に丸い模様がある。

 かっぱえびせんを投げて、私の友達を食いしん坊ちゃんに紹介してみた。

 食いしん坊ちゃんも、甲高い鳴き声を上げながら、私たちが投げたかっぱえびせんを見事にキャッチしている。

 まだ小さいながら、カモメの可愛らしさがわかるのだと思う。

 友紀の子供もまっちゃんの子供も大喜び。

 日菜子ちゃんと寛太くんも大喜び。

 みんな楽しそうに、次から次へとカモメに向かって、かっぱえびせんを投げている。

 春子さんは、夢中な様子でカモメの写真を撮りまくっている。

 私は、食いしん坊ちゃんの写真を撮り続けた。

 食いしん坊ちゃんに向かって、かっぱえびせんを投げているところの写真を春子さんに撮ってもらった。

 さすが写真が上手な春子さん。私の後ろ姿も食いしん坊ちゃんの顔もよく写っている。

「また来るからね!」
 食いしん坊ちゃんに向かって叫んでみた。

 返事をしてくれたのか、食いしん坊ちゃんは甲高い鳴き声を上げた。
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