透き通る季節の中で
 駿介と会う日まで、あと一ヶ月。

 街中を歩く人の装いも、だいぶ秋めいてきて、今年も透き通る季節がやって来た。

 交際は変わらず順調。

 大きな楽しみがあると、ありとあらゆることに対して、前向きな姿勢で取り組める。

 風邪を引いたのか、このところ微熱が続いているけど、全身から力がみなぎっている。

 気力体力ともに充実している。今は誰よりも速く走れそうな気分。

 透き通る空気を吸い込みながら、川沿いの道を思いっきり走ってみた。

 はあはあ、はあはあ。はあはあ、はあはあ。はあはあ、はあはあ。
 
 吐く息が薄っすらと白い。透き通る空気が最高に美味しく感じられる。

 いつの間にか、ジョギングウェアに赤い染みがついていた。

 鼻の下が冷たい。

 手で触ってみたら、鼻血だった。

 その瞬間、急に目の前が真っ暗になり、何も見えなくなって、何も聞こえなくなって、何も感じなくなってしまった。

 意識がだんだん遠退いていく。

 私はどこにいて、何をしているのだろう。
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