透き通る季節の中で
 目覚めたら、病室にいた。

 お腹が気持ち悪くて、なんだか吐き気がする。

 鼻の下がカサカサしている。

 右手の人差し指と中指と薬指が赤く染まっている。

 服装は、ジョギングウェアのまま。

 走っていたことは覚えている。その後のことは何も覚えていない。



 ベッドで横になったまま、白い天井を見つめていたところ、若い女性の看護師さんが入ってきた。

 私はベッドから体を起こした。

 看護師さんが手渡してくれたタオルで、私は鼻の周りを拭いた。

「ご気分はいかがですか」

「なんだか吐き気がします。私はどうして病院にいるんですか?」

「あなたはですね」

 看護師さんの話によると、私はジョギング中に意識を失って倒れてしまい、救急車で病院に搬送されたとのことだった。

 今までずっと健康だったのに、急にどうして……。

「私は大丈夫ですので、家に帰ってもいいですか?」

「鼻血を出されたので、念のために血液検査を受けてください」

「そうですか。わかりました」

 看護師さんに付き添われて、検査室に入り、血液検査を受けた。
 
 血液検査の結果は、三日後に判るとのこと。携帯に連絡してくれるという。
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