透き通る季節の中で
「先日の血液検査の結果をお知らせします」

「はい」

「率直に申し上げます」

「はい」

「血液検査の結果、急性リンパ性白血病であることが判明しました」

「…………白血病……ですか……。何かの間違いではないんですか?」

「間違いではありません」

「そうですか……」

「ショックを受けられたかと思いますが、どうか気を落とさずに、話を聞いてください」

「はい」

「日々、医学は進歩しています」

「はい」

「白血病は、治る病気です」

「はい」

「完治された方は、大勢いらっしゃいます」

「はい」

「どうか強い意志を持って、病と闘ってください」

「はい」

「施設の整っている大学病院を紹介します」

「はい」

「すぐに入院してください」

「はい」

「何かご質問はございますか」

「進行は、どの程度ですか」

「白血球の数値が異常に高いです。今は、それしか言えません」

「そうですか……」

「他に質問はございますか」

「どのくらい生きられますか」

「佐藤さんの頑張り次第だと思います」

「そうですか……」

「他にご質問はございますか」

「あの……」

「はい」

「三週間後に、大切な約束があるんです。入院は、その後でもいいですか?」

「どのようなお約束ですか」

「岩手県に行かなければいけないんです。とても大切な約束なんです」

「それは絶対にいけません。早期に治療を開始することが大切なのです。大切なお約束より、自分の体を優先してください」

「…………はい」

 とにかく信じられない気持ちでいっぱい。

 どうして私が白血病に……

 四月の健康診断では、何も異常は見つからなかったというのに……

 うなだれながら下を向いていたところ、先生が大学病院を紹介してくれた。

 必ず治りますよ。と言ってくれた。

 先生と看護師さんにお辞儀をして、診察室から出た。

 タクシーに乗って、家に帰った。

 ネットで白血病を調べてみた。

 白血病といっても、いろんなタイプがある。

 私は、急性リンパ性白血病。

 先生がそう言っていた。

 確かにそう言っていた。

 五年生存率は……

 調べれば調べるほど怖くなってくる。

 

 どうしてこんなに不幸が続くのか。

 お祓いの効果はなかったのか。

 円城さんが言っていたことも、神社の神主さんが言っていたこともウソだったのか。

 私は、まだ呪われているのだろうか。

 神様は、まだ私に試練を与えようとしているのか。

 生きていてはいけない存在なのか。

 死にゆく運命なのか。

 最後の試練だと思って、頑張らなければいけないのか。

 死ぬ前に会っておくべきか。やっぱり、それはいけない。

 駿介に何て言えばいいのか。

 幸せを掴むまで、もう少しだったのに……

 真っ直ぐ生きてきたというのに……

 悔しくて悲しくて涙が止まらない。
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