透き通る季節の中で
 入院十日目から、無菌室での生活が始まった。

 大きな窓がある。空がよく見える。イチョウの樹が見える。桜の樹も見える。小さいけど、テレビがある。部屋はとても綺麗。

 いろんな看護師さんが部屋に入って来る。私が何も言わなくても、丁寧にお世話をしてくれる。

 掃除係のおばさんが、定期的に掃除しに来てくれる。

 洗濯係のおばさんが、ありとあらゆるものを洗濯してくれる。

 まさに至れり尽くせり。

 食事は、まあまあ美味しい。

 お風呂は、そこそこ広い。

 感染症を防ぐため、手洗い、うがい、殺菌は、徹底している。

 口腔のケアも欠かさない。以前より歯を磨くようになった。

 不便な生活だけど、高級ホテルで暮らしているような気分。

 そう思ったほうが、前向きな気持ちになれるから。

 

 私の他にも、白血病の患者さんがいる。

 小さな子供もいる。

 生きる希望を失っている人もいれば、いつも明るく元気な人もいる。

 おしゃべり好きな人がいる。

 出来るだけ、私も明るく元気に過ごそうと思う。

 

 子育て中にも関わらず、美咲は毎日お見舞いに来てくれる。

 出産を控えているのに、友紀とまっちゃんは、ほとんど毎日のようにお見舞いに来てくれる。

 それぞれの旦那さんも、お見舞いに来てくれる。

 春子さんは、土日にお見舞いに来てくれる。日菜子ちゃんと寛太くんを連れて。

 会社の同僚も上司も、お見舞いに来てくれる。上司が、休職扱いにしてくれると言ってくれた。

 みんな、食べやすいものを持ってきてくれる。

 みんな、私を励ましてくれる。

 夜は退屈なので、日記を付けようと思う。

 私が生きた証。
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