透き通る季節の中で
あとがき
透き通る季節の中で 異色のラブストーリーをお読みいただき、ありがとうございました。
心より感謝申し上げます。
透き通る季節の中では、死別を経験された方に向けて書いた物語です。
死別の辛さ、悲しみを乗り越える姿を描いています。
物語の主人公、佐藤咲樹は、ごく普通の女性です。真っ直ぐな性格の女性です。
それにも関わらず、次々と不幸が襲い掛かってきます。
彼との死別を二回経験し、白血病になってしまいます。
運が悪いのか、呪われているのか、それは明確には描いていません。
一回目の死別は、さぞかし辛かったと思います。
まだ高校一年生。まさか彼が亡くなるとは思っていなかったことでしょう。
彼の突然の死に、咲樹は悲しみに暮れました。
競争なんてしなければ。大変な後悔をしたと思います。
学校に行けず、部屋に引きこもり、彼の絵を描き続けました。
そうすることで、せめてもの罪滅ぼしをしようとしたのだと思います。
性格の悪い妹。その妹を可愛がる両親。家庭内での孤立。
とても辛い日々だったと思います。
彼が好きだから、彼のことは忘れることができません。
あの日から、ずっと悩み続けました。
亡くなった山下亮太は、咲樹のことを見守っていたと思います。
早く立ち直ってほしいと願っていたと思います。
咲樹は、坂道を全力で駆け上がろうとしました。部活に出られるようになるために。元気に走れるようになるために。
そのとき、一輪のコスモスが見えました。
一輪だけ。山下亮太からのメッセージです。
咲樹は、その意味を理解しました。
前を向いて生きていくために、決断しました。
そうしないと、生きていけなかったと思います。
ずっと塞ぎ込んだままだったと思います。
高校卒業後、咲樹は家を出ました。心機一転、新たな生活を始めました。
マラソン大会に出場し、気の合う仲間と一緒に走り、だんだん元気になっていきました。
ただ、新しい彼氏を作る気にはなれなかったと思います。
心のどこかで、山下亮太のことを想っていたと思います。
27歳の夏、転機が訪れました。
友紀の誘いを断りきれず、合コンに参加しました。
オートバイと映画が好きな、安藤新地と出会いました。
咲樹も安藤新地も死別経験者。お互いに過去のことは話しませんでした。
やがて、交際に発展しました。
二人だけでのツーリング、部屋での映画鑑賞。とても幸せな日々だった思います。
幸せな日々は長くは続かず、安藤新地は、不運な交通事故で亡くなってしまいました。
二度目の死別。電話で彼の死を知らされた咲樹は、気を失いました。
十一年前の自分と今の自分は違う。そう自分に言い聞かせて、咲樹は立ち上がりました。
安藤新地の手紙を読み、咲樹はすぐに決断しました。会社を辞める覚悟だったと思います。
普通自動二輪免許を取得し、安藤新地が乗っていた同型のオートバイを購入しました。
そのオートバイで旅に出ました。彼への恩返し。
約一年間、安藤新地のヘルメットを後部座席に乗せて、いろんな道を走りました。
二人で行くはずだった奥日光。咲樹は落ち葉を拾いました。
ずっと前から決めていたのだと思います。咲樹は、彼のお墓に落ち葉をお供えして、別れを告げました。
安藤新地は、安心したと思います。
美咲、友紀、まっちゃん。親友の三人は、着実に幸せな家庭を築き上げていきます。
咲樹は、羨ましく思いながらも、喜んでいたと思います。
写真を趣味として、前向きに生きていこうとします。
写真を撮っているうちに、咲樹はカモメが好きになりました。
33歳の秋、再び転機が訪れました。
SNSで知り合った松永駿介と交際を始めました。
カモメが好きな者同士。会話が弾んだと思います。
お祓いをしてもらったものの、咲樹の不安な気持ちは消えません。
遠距離恋愛を続けて、様子を見ることにしました。
松永駿介は元気なまま。咲樹は、松永駿介と会う約束をしました。
そんな矢先、咲樹は白血病になってしまいます。
自分は生きていてはいけないのではないか。咲樹はそう思うようになり、病を受け入れました。
辛い闘病生活が始まりました。
多くの友達に支えられ、咲樹は白血病を治そうとします。
医学は進歩しているとはいえ、白血病は死の確立が高い大病です。
家族とは疎遠になっているため、ドナーはなかなか見つかりません。
体は日に日に悪くなっていきます。
やがて、ドナーが見つかりました。
骨髄移植は失敗に終わり、生きる望みは絶たれました。
咲樹は終活を始めました。
最後の力を振り絞り、カモメに会いに行きました。
私は羽ばたけなかった。大空を自由に飛び回るカモメの姿を見ておきたかったのだと思います。
咲樹は、最期の時を迎えました。
五人の友達が駆けつけました。他の友達は、外にいたのかもしれません。
咲樹は、そのとき、思いました。
こんなにも多くの友達に囲まれて。私の人生は、幸せな人生だったと。
咲樹は、奇跡的に息を吹き返しました。
心臓マッサージを受けて、一命を取り留めたのかもしれません。
その後、咲樹は、他の病院に移ったのか、どこでどう過ごしていたのか、隠れるように暮らしていたのか。
※ 物語の中では描いていません ※
みんな、咲樹を捜していたと思います。
咲樹は、屋久島で暮らしていました。レストランで働いていました。自由を満喫していました。
ある日、突然、美咲と友紀がレストランにやって来ました。カモメに導かれて。
そして、松永駿介と会いました。
ここで、物語は終わります。
その後、咲樹は、幸せに暮らしたと思います。
幸運のカモメ、食いしん坊ちゃん。ただのカモメだったのか……? 読者様のご想像にお任せします。
心より感謝申し上げます。
透き通る季節の中では、死別を経験された方に向けて書いた物語です。
死別の辛さ、悲しみを乗り越える姿を描いています。
物語の主人公、佐藤咲樹は、ごく普通の女性です。真っ直ぐな性格の女性です。
それにも関わらず、次々と不幸が襲い掛かってきます。
彼との死別を二回経験し、白血病になってしまいます。
運が悪いのか、呪われているのか、それは明確には描いていません。
一回目の死別は、さぞかし辛かったと思います。
まだ高校一年生。まさか彼が亡くなるとは思っていなかったことでしょう。
彼の突然の死に、咲樹は悲しみに暮れました。
競争なんてしなければ。大変な後悔をしたと思います。
学校に行けず、部屋に引きこもり、彼の絵を描き続けました。
そうすることで、せめてもの罪滅ぼしをしようとしたのだと思います。
性格の悪い妹。その妹を可愛がる両親。家庭内での孤立。
とても辛い日々だったと思います。
彼が好きだから、彼のことは忘れることができません。
あの日から、ずっと悩み続けました。
亡くなった山下亮太は、咲樹のことを見守っていたと思います。
早く立ち直ってほしいと願っていたと思います。
咲樹は、坂道を全力で駆け上がろうとしました。部活に出られるようになるために。元気に走れるようになるために。
そのとき、一輪のコスモスが見えました。
一輪だけ。山下亮太からのメッセージです。
咲樹は、その意味を理解しました。
前を向いて生きていくために、決断しました。
そうしないと、生きていけなかったと思います。
ずっと塞ぎ込んだままだったと思います。
高校卒業後、咲樹は家を出ました。心機一転、新たな生活を始めました。
マラソン大会に出場し、気の合う仲間と一緒に走り、だんだん元気になっていきました。
ただ、新しい彼氏を作る気にはなれなかったと思います。
心のどこかで、山下亮太のことを想っていたと思います。
27歳の夏、転機が訪れました。
友紀の誘いを断りきれず、合コンに参加しました。
オートバイと映画が好きな、安藤新地と出会いました。
咲樹も安藤新地も死別経験者。お互いに過去のことは話しませんでした。
やがて、交際に発展しました。
二人だけでのツーリング、部屋での映画鑑賞。とても幸せな日々だった思います。
幸せな日々は長くは続かず、安藤新地は、不運な交通事故で亡くなってしまいました。
二度目の死別。電話で彼の死を知らされた咲樹は、気を失いました。
十一年前の自分と今の自分は違う。そう自分に言い聞かせて、咲樹は立ち上がりました。
安藤新地の手紙を読み、咲樹はすぐに決断しました。会社を辞める覚悟だったと思います。
普通自動二輪免許を取得し、安藤新地が乗っていた同型のオートバイを購入しました。
そのオートバイで旅に出ました。彼への恩返し。
約一年間、安藤新地のヘルメットを後部座席に乗せて、いろんな道を走りました。
二人で行くはずだった奥日光。咲樹は落ち葉を拾いました。
ずっと前から決めていたのだと思います。咲樹は、彼のお墓に落ち葉をお供えして、別れを告げました。
安藤新地は、安心したと思います。
美咲、友紀、まっちゃん。親友の三人は、着実に幸せな家庭を築き上げていきます。
咲樹は、羨ましく思いながらも、喜んでいたと思います。
写真を趣味として、前向きに生きていこうとします。
写真を撮っているうちに、咲樹はカモメが好きになりました。
33歳の秋、再び転機が訪れました。
SNSで知り合った松永駿介と交際を始めました。
カモメが好きな者同士。会話が弾んだと思います。
お祓いをしてもらったものの、咲樹の不安な気持ちは消えません。
遠距離恋愛を続けて、様子を見ることにしました。
松永駿介は元気なまま。咲樹は、松永駿介と会う約束をしました。
そんな矢先、咲樹は白血病になってしまいます。
自分は生きていてはいけないのではないか。咲樹はそう思うようになり、病を受け入れました。
辛い闘病生活が始まりました。
多くの友達に支えられ、咲樹は白血病を治そうとします。
医学は進歩しているとはいえ、白血病は死の確立が高い大病です。
家族とは疎遠になっているため、ドナーはなかなか見つかりません。
体は日に日に悪くなっていきます。
やがて、ドナーが見つかりました。
骨髄移植は失敗に終わり、生きる望みは絶たれました。
咲樹は終活を始めました。
最後の力を振り絞り、カモメに会いに行きました。
私は羽ばたけなかった。大空を自由に飛び回るカモメの姿を見ておきたかったのだと思います。
咲樹は、最期の時を迎えました。
五人の友達が駆けつけました。他の友達は、外にいたのかもしれません。
咲樹は、そのとき、思いました。
こんなにも多くの友達に囲まれて。私の人生は、幸せな人生だったと。
咲樹は、奇跡的に息を吹き返しました。
心臓マッサージを受けて、一命を取り留めたのかもしれません。
その後、咲樹は、他の病院に移ったのか、どこでどう過ごしていたのか、隠れるように暮らしていたのか。
※ 物語の中では描いていません ※
みんな、咲樹を捜していたと思います。
咲樹は、屋久島で暮らしていました。レストランで働いていました。自由を満喫していました。
ある日、突然、美咲と友紀がレストランにやって来ました。カモメに導かれて。
そして、松永駿介と会いました。
ここで、物語は終わります。
その後、咲樹は、幸せに暮らしたと思います。
幸運のカモメ、食いしん坊ちゃん。ただのカモメだったのか……? 読者様のご想像にお任せします。