透き通る季節の中で
 ピアノ教室の先生は、とても親切で優しいおばさんで、初日から自由にピアノを弾かせてくれた。
 
 先生に言われたとおり、自分の指を動かして、ピアノを弾いてみると、色んな音が出る。 
 
 私は夢中になって、ピアノの鍵盤を叩き続けた。

「今日はここまでにして、お菓子を食べましょうか」
「はい。いただきます」
 ピアノ教室の先生に勧められて、私はお菓子に手を伸ばした。
「このチョコ味のクッキーは、すごく美味しいですね。先生が作ったんですか?」
「そうよ。いっぱい食べてね」
「はい」

 先生の手作りのクッキーがとっても美味しかったので、いつの間にか、ピアノのことは何処かへいってしまい、クッキーを食べに行くことが目的でピアノ教室に通うようになってしまった。
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