透き通る季節の中で
 練習は男女一緒。
 二人一組になって軽くストレッチ。
 私は美咲と一緒にストレッチを始めて、友紀は部長の橘先輩と一緒にストレッチを始めた。

 友紀は自己紹介のときに面白いことを言ったから、橘先輩に気に入られたのかもしれない。
 
「それでは、外周を五週走ります。一年生部員も私の後に続いてください」
 橘先輩の指示に従い、私たち一年生部員は、先輩部員の後ろに並んだ。
 
「今日も走って走って走りまくって! ランランラン!」 
 橘先輩の独特な掛け声により、先輩部員が裏門から飛び出していった。

 私たち一年生部員も裏門から飛び出した。

 いきなりの上り坂。

 ひと月ほど前まで走っていた中学校の外周は、ずっと平坦な道だった。
 上り坂も下り坂もある外周は、脚力を上げるには絶好のコース。


 先頭を走っている橘先輩は、長距離部の部長を務めているだけあって、悠々と坂道を駆け上がっている。
 他の先輩たちも坂道を走り慣れている様子で、どの先輩も悠々と坂道を駆け上がっている。
 美咲と友紀は、練習初日ということもあってか、いつも以上にお互いに競い合うように走っている。美咲が前に出れば、友紀が前に出る。抜きつ抜かれずの繰り返し。

 私は集団の最後尾についた。無理はせず、自分のペースで走る。


 一週目は楽しく走れた。
 二週目も三週目も楽しく走れた。
 四週目の途中から息が切れてきて、五週目の最後の上り坂はすごくきつかった。
 完全に息が切れてしまった。

 私以外の人は息を切らしていない。
 美咲も友紀も余裕の表情。

 
「今年の新入部員は頼もしいわ。その調子で、明日からも頑張ってね」
 橘先輩が笑顔で言ってくれた。

 他の先輩も嬉しそうな顔をしている。



 先輩たちの期待に応えるため、明日からも頑張って走ろうと思う。

 目標は、息を切らさず、悠々と坂道を駆け上がれるようになること。
< 98 / 268 >

この作品をシェア

pagetop